あまやどり

ぽつぽつぽつ。
そんな音を定期的に奏でていた雨は、気づけば随分と荒々しい音へと変わっていた。
傘を持っていない私達は濡れる他、道はなくて。
どこか雨宿りができる場所まで走るしか無かった。

一軒の小さなお店の下。どうにか見つけたその軒先にお邪魔させてもらう。
降り注ぐように私達の髪を濡らしていた雨は、バチバチバチと音を鳴らして地を濡らす。
カバンからタオルを取り出し、風邪をひかないようにと彼女へと差し出せば首を横に振られた。
「私より仁美さんのほうがよほど寒そうだよ。風邪をひいちゃうなら仁美さんのほうだって」
ぽたぽたと肩を濡らす雫。どうやら髪は自身が思っていた以上に濡れているらしい。

「…不謹慎だけど、濡れた仁美さんも綺麗だね」
髪をかきあげ、にこりと笑った佳香ちゃんに私はどう反応して良いやら解らなくて。ぽかんと口を開いたままだった。
そうこうしているうちに、手元にはあったタオルで髪を丁寧に拭かれて、私はほんのすこし幼いときに戻ったような錯覚に陥った。
「佳香ちゃんは見た目の可愛さより勇ましいね」
濡れた彼女はてっきり可愛いと思っていたが、どうやら私の見込み違いだったようだ。

「そう?ありがとう」
さらりと礼を言う彼女の横顔をちらりとみて、それからそっぽを向くように視線を逸らした。


雨に濡れた貴方に、すこしの色を覚えて私は不覚にも胸をときめかせてしまいました。

「あとで傘買いましょうか、仁美さん」
「どうして?」
「だって相合傘できるじゃない?」
すこし照れたように笑う姿に、またひとつ私は彼女のことを好きになった

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