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サイズが明らかにあっていない2人の服を丁寧に脱がすと昔、佳奈ちゃんとかおちゃんが買ってくれた色ちがいのワンピースを2人に着せてあげた。
「美静」
「なに?かなちゃん」
幼い私は、にこにこと笑うかなちゃんに呼ばれて、走りよる。
「ちょっとこれ着てみて」
そういって渡されたものは、花柄の可愛いワンピース。
1つは桃色で1つは淡い黄色のワンピース。
「これどうしたの?」
「佳奈ちゃんと私からのプレゼントだよ」
優しく微笑みながら、かおちゃんは私のシャツのボタンを外していく。
「なんで2つもあるのー?」
「どちらとも美静に似合うと思ったから」
さらりと言う佳奈ちゃんは、ワンピースを私に着せてくれた。
「やっぱり可愛い!」
「お姫様みたいだよ」
にこにこと微笑んでくれる両親をみていると私も幸せな気持ちになっていく。
「ありがと、かなちゃん。かおちゃん」
そんな懐かしい記憶。
だけど、あのころから2人の親バカな部分は見えていたんだなと実感する。
愛されていることは生まれたときから知っていたんだけどね。
「美静ー」
ぐいぐいと私の服の裾を引っ張る佳奈ちゃん。
しゃがもうとするが、佳奈ちゃんが私の胸に飛び込んできたため勢いよく後ろに倒れた。
「かなちゃん。私も美静に抱っこされたい」
左腕に無理矢理入り込むとかおちゃんは笑顔になった。
倒れたままの私は両腕が占領されているため起きることは困難である。
「まぁ、いいか」
「あったかいね。かなちゃん」
「幸せだね。かおりちゃん」
なにより両親が幸せなことが私の願いなのだから。
うとうと、と目がゆっくりと閉じられていく。
夢の世界に誘われる間際に、おやすみと優しい声が2つ聞こえた。
「おはよう、美静」
「もう12時だよ?」
「あれ…佳奈ちゃん?かおちゃん?」
目を擦りながら、体を起こせばベッドの上にいた。
そして私の両隣には佳奈ちゃんとかおちゃんがいるわけで。
「夢だったのか…」
幼い佳奈ちゃんとかおちゃんをもう一度見たかったのにな。
「いつまでも寝ぼけていたら、イタズラするからね」
「私も手伝う!佳奈ちゃん」
意地悪気に笑いながら、2人は私の服に手をかけ始めた。
「佳奈ちゃんもかおちゃんもやめてよー」
賑やかな声が部屋中に響く。
その部屋の隅に、綺麗にたたまれたワンピースが2つ置いてあることは、まだ秘密のようだ。
「美静、ありがとうね」
そういって笑うかおちゃんは、優しく髪を撫でる。
「楽しかったよ」
額に口付ける佳奈ちゃんも優しく微笑んでいた。
「「(私たちの可愛いお姫様。大好きだよ)」」
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