ゆめ
この手を取るのはいつだって私だと思っていた。
幼少から、佳香の隣は私であるはずで
だけど、彼女の隣には見知らぬ少女がいた。
愛しげにみつめあう姿は恋人同士だと、語っているように見えた。
「さよなら」
笑顔で告げられた言葉に、私は一筋の涙が頬を伝うのを感じた。
ああ、いつのまにか。
私は必要ない存在になっていたみたい。
「どうしたの、静お姉ちゃん」
肩を揺すられ私は重い瞼をどうにかして上げる。
目の前には、佳香が心配そうに私を見つめていた。
「どうしたの?」
今にも泣きそうな顔で私に抱きつく佳香の頭を撫でる。
「静お姉ちゃん泣いてたから」
その言葉に私は目の縁を拭う。
「本当だ」
「なにか悲しいことがあったのかと思ってびっくりしたんだからね」
見た目は綺麗でしっかりしているのに。
私の前だと、昔から変わらない姿を見せる佳香。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「私はずっと佳香のそばにいるからね」
可愛い私の妹のようなこの子も、いつか私から離れていくのだろうか。
だけど、簡単にこの手を離してなんてあげない。
さっきの夢が
どうか正夢でありませんように
【終】
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