ようちえん

おはようございます。みなさん。
私の名前は佳香。
名字は?なんて突っ込みはしてはいけません。


「おはようございます」
「おはよう。佳香ちゃん」
靴を履き替えて最初に私と出会ったのは清水香里先生。
まだ新米先生らしく、1年先輩の植田佳奈先生によくからかわれている。
だけどそんな先生が私はとても好き。



「今日もかわいいなー」
毎朝、私を抱っこする香里先生。
だけど、そのたびにタイミングよく現れるのが佳奈先生なのです。

「おはよう、佳香ちゃん」
「おはようございます。佳奈先生」
香里先生に抱かれたまま、頭を下げて挨拶する。

「あれ、香里ちゃんいたんだ?」
「最初からここにいたから!」

佳奈先生は香里先生をからかっている。お馴染みの行動に笑っていると、私の体はふわりと浮かぶ。

「おはよう。佳香」
ぎゅっと抱きしめて挨拶してくれたのは大好きな先生の1人の仁美先生。
仁美先生は、この園ではベテランの先生。そして私の実の姉でもあります。

「おはようございます。仁美先生」
「もう…仁美先生じゃなくて仁美お姉ちゃんって呼んで…痛っ。ちょっとなんなのよ」
優しい笑みを浮かべながら私の頭を撫でる仁美先生。しかし突然自分の頭を両手で抑え、表情を崩す。


「仁美、それセクハラ」
「なば…、わかってる?それは犯罪だよ?あと、佳香ちゃんは私と佳奈ちゃんのアイドルなんだからね?」
「いいじゃん!実の妹なんだし!」

満面の笑みで笑う佳奈先生と香里先生。
仁美先生はベテランの先生なのに、佳奈先生と香里先生にいつも酷い扱いをされている。
ああ、こんなことを言っては誤解を生むかもしれないから訂正しておこう。
愛があるからこその扱いだと。
私は仁美お姉ちゃんが大好き。だから、こんな風に仲がいい姿を見ると妹としては嬉しいのです。

火花が散るように激しいにらみ合いが続く中、溜め息とともに静先生が現れた。


「おはよう。佳香」
「おはようございます。静先生」

「おー。よしよし。今日も佳香は可愛いね」
抱き上げて頬擦りしているのは、仁美先生と同期でそして仁美先生の奥さんでもあります。
素敵なお姉さんでしょう?本当に、仁美先生には勿体ないよね!

「ついさっき会ったばかりでしょ」
「けど佳香とは一時も離れていたくないもん」
ぎゅーっと抱きしめてくれる静先生。

「静お姉ちゃんって呼ばないとキスしちゃうわよー」綺麗な顔がゆっくり近付いてくる。
黙ったままでいると、慌てたように仁美先生がそれを阻止した。

「ちょっと、静さん佳香になにしてるの?」
慌てて止めに入った仁美先生は、先程まで佳奈先生達と死闘を繰り広げていたからか息が荒い。

「なにってキス?」
きょとんと首を傾げ言葉を返す静先生。

「ダメだから!姉として許さないから」
「…だって。佳香どうする?」

「どうしましょう…」
考え混んでいると、静先生がなにかを提案してきた。
その案に私は小さく頷くと、仁美先生の方へ向いて口を開いた。

「私と静先生の問題だから放っておいて」





マンガで出てくるかのような驚き方をしながら、仁美先生はショックをうけていた。
こんな素直なところが可愛いな、と思いながら仁美先生の頭を撫でる。
「意地悪してごめんね、お姉ちゃん。」
「ううん。いいよ」
表情を明るくさせ笑うお姉ちゃんは、やはり可愛い。


「じゃあ、そろそろお部屋にいこうか?」
「そうですね。静先生」

差し出された手を取ろうとしたら、私は仁美先生に抱っこされる。

「私がお部屋まで連れていくもん!」
「あっ。なばずるい!」





今日も賑やかに1日が始まった。

「お姉ちゃん!大好き」




なんだかんだいって。
一番好きなのは、仁美お姉ちゃんな私です。


【終】


[ 2/40 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]


トップ


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -