琥珀が話終わると、七隊たちはしみじみと呟いた。
十「そんなことがあったのか…」
燿「いつも能面みたいな刹那にそんな少女な一面が」
琥「かれこれ10000年近く前のことですからねぇ」
双「い、10000年…?」
燿「刹那そんな長生きだったの?」
琥「そうとも限らないそうですよ。それぞれの世界によって時の流れは異なるそうですし」
斎「髪の毛の話も初耳ね」
双「捺波ちゃんは知ってた?」
捺「…(首振り)。…神流は?」
神「…初耳だ」
琥「あれには私も驚きましたよ。感情で色が変わる髪の毛なんて初めてですからね」
十「へー、そうだったんだ。だってさ刹那…あれ、刹那ー?」
刹那はといえば、『刹那が琥珀のたもとを〜』あたりで顔をおさえ、こたつのなかに潜り込んでしまっていた。
こたつの中から少し見えている髪は、明らかに薄紅色を帯びていた。
刹「私が、私のしたことが…あのような浅ましいことを知られるなどと…ううう…」
燿「ふわー…あの刹那が恥じらってる」
琥「おやおや」
蘇「みんなー!夕餉できたっすよー!」
琥「ありがとうございます、蘇芳。さ、皆さん食べていってくださいな」
燿「いいの?」
蘇「もちろんっすよ!茜君と空乃ちゃんも呼んでくるっすね!」
斎「恐れ入ります」
それぞれお礼を言いつつ机に向かった。
「「「「「「…は?」」」」」」
そして、七隊一同唖然。
目の前には、ぐつぐつと煮えていい匂いの鍋。
それはいい。
問題は、その鍋が、4つあること。
七隊でも鍋くらいするが、それでも鍋2つで事足りる。
そこに茜と空乃がやってきた。
空「…おなべ…!」
茜「今日はなんなの?」
蘇「飛鳥鍋とあんこう鍋とミルフィーユ鍋とキムチ鍋っすよ!」
何一つ知らない七隊。
十「それ…美味しい…のか?」
蘇「もちろんっすよ!ささ、食べてくださいっす!」
燿「いや待て明らかに量おかしいって!鍋4つとか初めて見たんだけど!」
琥「茜と空乃がよく食べますからねぇ」
双「どれも見たことないお鍋です…これ、なんていうんですか?」
蘇「それは飛鳥鍋っすよ!話に聞いて美味しそうだったから作ってみたんす」
斎「では、こちらは?」
蘇「それはあんこう鍋っす!どぶ汁っていったりもするらしいっす」
茜「まだ?」
蘇「もうできてるっすよ!今器出すっすね…さ、どうぞっす!」
全「頂きまーす!」
茜「………。おかわり」
空「空乃も…」
蘇「はいっす!」
十燿「「いや速ぇよ!」」
双「蘇芳さん、これはどんな出汁を使ってるんですか?」
蘇「これはっすね…」
少しして、なんとか神流と捺波が刹那を連れ出し、賑やかな食卓となった。
その夜。
部屋の方からやいやいと賑やかな声が聞こえるなか、刹那は縁側に出た。
琥「おや、刹那さん。皆さんのところに行かなくて良いのですか?」
刹「…あちらはあちらで楽しそうですし…私がいる必要もないでしょう。…隣、いいですか?」
琥「ええ、どうぞ」
刹那が隣に座ると、琥珀はなにも言わずにお茶を出した。
一口すすると、変わらない甘さ。
刹「変わりませんね。あなたも…このお茶も。10000年もの時を経ているというのに」
琥「妖怪にはあっという間です。あのときのことも、昨日の事のように覚えていますよ」
刹「…あのチョーカー、まだあります」
琥「おや、使いきらなかったのですか。力の制御は出来るようになりましたか?」
刹「ええ。時おり転送装置に充填しなくてならないので、足らないくらいです」
琥「それはそれは」
少しの沈黙。
そして、刹那がおもむろに宙で人差し指を回した。
すると、そこにどこからか風呂敷に包まれた瓶が現れた。
刹「…琥珀様。一杯…いかがですか?」
琥珀は笑って頷いた。
琥「ええ、頂きます」
夜は次第に更けていく―。
アンバーの石言葉【
抱擁、長寿、大きな愛】
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