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『…空亡殿、些か、やりすぎでは』
『別に。それに、どうも変わった輩が来たみたいだし』
爆発した方角を眺めて、凍吹は呟く。空亡は己の有り余った妖気を火の玉に具現化し、漂わせていた。
凍吹は、空亡の見やる方へ視線を向ければ、確かに変わった輩がいる。敵陣に突っ込み、次々と薙ぎ倒していく火の鳥と、閃光の姿。
「せぃやぁあああっ!!!!」
「どぉりゃあああっ!!!!」
彼等から発されたであろう掛け声が、此処まで聞こえる。そして、その向こうに視線をうつせば、陣地を築き上げていた。
そこに近づく敵は、無情にも氷漬けにされ、どこからともなく現れた波によって、退けられている。敵の数がだんだん勢いを失っていた。
『……あーあ、せっかくの獲物がどんどん減ってく』
『……味方、だろうか』
『おぅ、あいつ等は味方だぜ!』
凍吹の疑問に、能天気にも明るい声が答えた。その声に空亡は苛立ち、舌打ちする。
『ッチ、爆発死に出来なかったか……』
『ひっでぇ。つかお前さ、あいつ等を巻きこむなよ』
『誰のせいだと思う?』
『オレか! ……いててっ』
『……雷鬼殿、無事だったのだな』
スタン、と凍吹の隣に降り立ったのは、雷鬼。先程の爆発で、ダメージをかなり負っていたのか、着地を失敗する。凍吹に支えてもらい、何とか立ち上がった。その後から、照姫と憑喪人形がやって来る。
『ミンナ、無事ダッタノネ』
『げ。ガラクタも生きてた。うわぁ、最悪』
『…うぬという奴は…!!』
『照チャン、オチツイテ』
憑喪人形になだめられるも、照姫は睨み付ける。空亡は肩をすくめ、七隊に視線を戻した。そろそろ、敵の払拭作業が終わりそうだ。
『で、あいつ等に任せるの? あの軍隊』
空亡が聞けば、照姫は頷いた。
『あぁ。あれは彼等の専門だからな』
『ソウミタイネ。…照チャン、アノ子タチ、此処二、ノコッテクレソウ?』
『……いや、直ぐ出るだろう』
『ソウ…』
しょぼんと落ち込んだ憑喪人形。気持ちはわかる。余も、少し彼等と話してみたいが、そうはいくまい。七隊の創立者を思いだし、照姫は苦笑いした。そして、
「あ、いたぁー!!」
「照姫、賠償金もかねて報酬額いくらー!?」
「こら燿、けちらないの」
「隊長、騒がしい」
「「何だって!!?」」
「あ、あわわ、喧嘩はだめだよ!」
さて、七隊が帰ってくる。彼等の望むように褒美はたんとせねばな。
(完)
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