頂き文 | ナノ



――一方、ブレイカーの集まった場所にて、彼等の激戦が繰り広げられていた。敵襲の群れに独り、飛び込んで斬りつけている亡霊剣士こと―凍吹は珍しく苛立ったように顔をしかめる。

『……キリがないな』

『あれ、亡霊どうしたの、その顔。キミらしくないね』

 さらに凍吹に襲いかかるブレイカーに、どこからか火の玉が現れ、突如爆発した。小さな火の玉から想像つかない爆発音と共に、一瞬のうちに辺りが火の海と化す。

 巻き沿いを食らった凍吹は、かなりのダメージを負ったが、す、と通常の無表情に戻る。隣に降り立ったであろう、爆発させた張本人の者に声をかけた。

『……空亡殿、かたじけない』

『ねえ、まだ来ないの? どこをほっつき歩いてるのあの問題児』

 降り立った少年こと―空亡は、一体のブレイカーの身体を、幼い容貌から似つかわしくない、歪な黒い腕で握り潰しながら、聞いた。既にブレイカーが絶命しているにも関わらず、力を込めている様は、かなり苛立っている。

 凍吹は目を閉じた。こちらに急速に近寄るいくつもの気配を感じとり、呟く。

『……もうすぐだ』

『あ、そう。後5秒以内に来なかったら打ち上げ花火でもあげようかな』

『……そうか』

 無邪気な声でカウントダウンを始めた空亡を横目に、凍吹には止める術も力もなく、敵を少しでも減らすことに専念した。

―――――

『よっしゃあ! とうちゃーく!!』

「瞬間移動であっという間だったが」

『気分だよ、気分!』

「お前って、バカだろ」

 冷静に突っ込む神流に対し、雷鬼はにかっと人当たりのいい笑みを浮かべる。そんな雷鬼に、燿はふよふよ浮きながら呆れたように言った。そんな燿を、獲物を捕らえる猫のごとくじっと見つめるのは、憑喪人形。

『……燿チャンハ、ユウレイ、ナノ?』

「いいえ、燿は浮いてるのが普通なのよ。それにしても、貴方、日本人形のつくも神なのね。これが終わったら、お茶でもしないかしら」

『エ……イイノ?』

 斎希の言葉に、憑喪人形はカタリ、と不気味な笑みを浮かべる。傍らにいた双葉がそれを見て、青ざめていたが。

 そんなやり取りに、ぱんぱん、と注意を引く十六夜。気合いをいれるように、ゴォッ!!と身体が炎に包まれる。

「さぁ、みんな、気を引き締めよう! 私たちの出番だ!」

「やれやれ…ようやくブレイカーたちとご対面か」

 七隊がそれぞれ、身体を変型させたり、武器を構えるなか。捺波は一人、首をかしげた。
 どういうわけか雷鬼の笑みがひきつっていた。照姫も、何かを感じとり、一段と険しい顔で彼方わ睨み付けている。一体、何に対して―。

            ・・・・・
『……雷鬼、一つ聞こう。奴を呼んだのかうぬは?』

『……いやぁ、だって、あいつ、こういうの好きだろ?』

『言い訳無用。後で覚えとけ』

 照姫の一層低い声に、七隊は思わずぞっと寒気を感じた。憑喪人形はやれやれ、と360度首を回し、いつもの日常茶飯事の感覚で呆れている。

 照姫は七隊に向かって、光の玉を放つ。それは彼らを温かく包みこんだ。

「? 照姫、これは…」

『ブレイカーの中に、うぬ等を移動させる。加護もつけた。思う存分、暴れてこい』

 そう言って、照姫は何かを唱えた。七隊の視界がブレイカーの群れに変わる寸前、隕石のごとくに向かう火の玉が見えた。

 捺波は思わず声をあげかけるも、景色が倒すべき相手の群れに変わり、七隊に緊張感が走る。捺波は気持ちを切り換え、目の前の敵を倒すことに優先した。

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