ミノンの過去を見た後、クリスタルワールドへと差し掛かる。オレに話しかけていたガーランドも、ついに消滅した様だ。



X-L別れ(sideZ)



カオス達を倒し、デスゲイズを倒すと、トランスクジャの元へ辿り着いた。この世界の根源であるクリスタルを破壊して、全てを無に帰すつもりの様だ。そんなことさせない。ここはオレ達の生きる世界なんだ。

周りがわからなくなる位に夢中で戦っていたら、急にクジャの動きが変わった。魔法の詠唱を始める。どこか既視感がした。そうだ、これは……アルテマだ!

そう察した刹那、後ろから小さな影が飛び出して来る。瞬く間に天使みたいな半透明の白い羽を広げてクジャに飛び付いた。

「……ミノン!?」

「時よっ!」

叫びにも似た短い詠唱の後、二人の姿が消え去る。光と共に吹き荒れた突風に吹っ飛ばされ……オレは意識を失ってしまった。



(痛っ……てぇ……。)

意識が戻った時、身体中が痛くて動けなかった。みんなはどこだろうか。クジャは、ミノンは……どうなったのだろうか。確かめようにも、四肢に力は入らない。ついには投げ出してしまった。

どれだけそうしていただろう。ふと、暖かさを感じてハッとする。

(ミノン……?)

いつかの様に、身体がだんだん軽くなっていった。ダガーやエーコのケアルとは少し違う、癒しの力のためだ。きっと彼女が回復術を使ってくれているんだろう。楽になった身体を起こし、ミノンの姿を見ようと思ったら……。

「!」

ミノンではなく……腰の石が光って、溢れんばかりの力を放出していた。

(……!)

魔の森で貰ってから、当然の様に着けていた。貰ったことが純粋に嬉しくて……話さないミノンが話しかけてくれたのが、嬉しくて。

あの時は何とも思わなかった。ミノンの力を知ってからも、素性を知ってからも……お守りの様なものだろうと勝手に思っていた。

[ジタン様。]

「うわっ!?」

石からミノンの声が響く。

[今、こうして私の声を聞いているということは……必要になったのですね。もしもの時の為にあなたに託した、この力が。]

「……っ!?」

[大丈夫です。私がいなくても、あなた方なら……絶対大丈夫です。……大丈夫。]

まさかこんな力を秘めているなんて欠片も思っていなかった。繰り返された強い言葉に合わせて石が光を増し、砕け散る。その欠片は別れて、近くで倒れていた皆の体内に入った。

「みんな……!」

立ち向かおう。永遠の闇に。

オレ達なら、大丈夫。







詳しいことは、よく覚えてない。

だが……確かに永遠の闇に打ち勝ったオレ達は、クジャの力に導かれてガイアに戻った。みんな無事だ。――ミノンは、いないけれど。

地上ではイーファの樹が暴走を始めていて、大地が次々と荒らされていた。オレ達の立っている場所も危ないだろう。だけど、オレにはやらなきゃならないことがあった。

「クジャがまだ生きてるんだ! このまま放っておくわけには行かない!」

みんなと――ダガーとも別れて、クジャと……きっと一緒にいる、ミノンの元へ向かう。


絶対、助けるから。




***




真っ白な部屋を抜け、結晶で出来た世界へと足を踏み入れる。沢山の魔物を倒した後、私達はトランスした<クジャ>の元へ辿り着いた。



X-L別れ



全ての根源であるクリスタルを壊そうとする<クジャ>を止める為、ジタン様達が立ち向かう。随分と強くなったと感じた。最初からその輝きは十分に強かったけれど。私も手助けすべく補助の術を発動させる。

<クジャ>は少しずつ、確実に追い詰められていった。もう、終わりだろう。皆が畳み掛ける。遂にトドメの一撃が入ったかと思えた時――<クジャ>の周りに気が集中し始めた。

(これ……まさか、あの時と同じ……!)

紡がれる詠唱からあの術の気配を察する。急いでこちらも気を集めるが、圧倒的に不利だった。こうなったら……。

(今だっ……!)

魔力で羽を出してクジャ様に飛び付き、放出された力を吸収して抑え込む。

「時よっ!」

渾身の力で、なるべく不安定になる前に時空を越えると――目の前が真っ白になった。



──なあ美音。

──なあに? 優輝。

──お前ってさ……若干無鉄砲だよな。

──えっ、……そう?

──いざとなるととんでもねえことしでかすじゃん? 自分の身も省みず……さ。

──そうかな……結構そういう時って、勝算があるからやってるんだよ?

──嘘つけ。結構ギリギリの橋渡ってるクセに……。

──う……無鉄砲なのは、お互い様だと思うけどね。

──……そういやお前、また時空越えるの失敗したんだって?

──な……何で知ってるのよ!?

──ははっ、どうだった?

──……大して。落っこって木に引っ掛かった所を、人に見られたくらい。翔ぼうと思って羽出しちゃってたけど……特に驚かれなかったわ。

──ふーん。そりゃあ運が良かったな……俺なんかこの前、ちょっと術使っただけで牢屋行きだったぜ……。

──……そっか。……それにしても、優輝は時空を越えるの上手だよね。羨ましいわ……。



私も随分上手くなった。誰かと一緒でも、不安定な力の塊と一緒でも、越えられる。

力の衝突に巻き込まれた皆様は、大丈夫だろうか。





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