眩い閃光と衝撃に、思わず目を瞑る。

瞼の裏には、前へと踊り出た金の残像が焼き付いていた。



X-I脱出(sideF)



目を開けると、荒れた大地と……今も崩壊する世界が目に入った。

「ライラ……?」

あの残像は、恐らく彼女のはずだ。どこにいるのだろうか。急いで辺りを見渡す。

「……ミノンッ!」

ライラはいなかったが、少し遠くにミノンが倒れていた。変化の術が解けたのだろう。駆け寄り揺さぶるが、意識が戻らない。やがて聞こえた微かな呻き声に胸を撫で下ろす。

「ジタン! 早くここを脱出しないと、この塔もテラそのものも壊れちゃうよ!」

「オレはジェノム達を助けに行く! あいつらには何の罪もない……見過ごすわけには……。」

ジタンは頑として譲らなかった。本当に“らしい”決断だと感じる。ジタンが、無事に“らしさ”を取り戻して良かった。その博愛主義も、周りが止めた所で聞かないのも……出会った頃から変わらない。

ああなった時のジタンはやや向こう見ずなため単独行動させるのは少し心配だったが、ダガーが共に行ってくれるというので任せる。彼女がいるならば安心だろう。守るために無茶は抑えるはずだからだ。先に退避するべくミノンを抱えると、思っていたよりもずっと軽かった。少食の質だからだろうか。

「っ!」

飛空挺の近くまで来た時、これまでになく大きな揺れに襲われた。目に見えて崩壊が加速している。このままでは、ジタンとダガーが危険だ。早く戻って来ないかと遠くを見つめる。

「……ん? なんじゃ?」

目を細めた時、右前方からサラマンダーが近づいてきた。問いかけてなお、無言のままで距離を詰めてくる。やがて私の目の前で立ち止まると、徐にミノンの額に手を翳した。溢れる光……これは、チャクラだろうか。

「……?」

彼が更に何度か掛ける。すると、ミノンがそっと目を開けた。しかしすぐ顔をしかめ、頭に手をやる。

「ミノン! 大丈夫か!? まだ頭が痛むのか……?」

「…………。」

目線で頷いたが、辛そうな表情のまま話さなかった。サラマンダーが更にチャクラを掛ける。

「無理続きで悪いが、この世界をもう少し保たせろ。まだジタン達が帰ってねえんだ。」

「…………。」

サラマンダーの言葉の意図する所が分かったのか、ミノンはゆっくりと手を掲げた。それと同時に――周りの景色が凍りつく。まるで崩壊が止まったかの様だ。俄には信じ難かった。こんな小さな身体で、何ということを成し遂げるのだろう。世界の命運すら左右できるというのだろうか。

「……流石だな。これだけ陰の気がありゃキツいのもわかるが……少し保たせろ。」

ミノンはまた目線だけで頷くと、いっそう纏う気を強めた。

「陰の気?」

「……この重い感じだ。こいつなら、その影響を顕著に受けてもおかしくないからな……大方頭でも痛てえんだろ。」

「だからチャクラをかけたのか……。」

チャクラには、気の流れを正常にする力がある。サラマンダーはどこで覚えたのか気に関する知識や技術に詳しく、術式にも長けていた。だからミノンの不調の原因もわかったのだろう。

少しして、ジタン達が駆けて来た。無事にジェノム達を説得できた様だ。

「すまない、遅くなって……だがこれで全員だ。」

皆が乗り込んだのを見届けると、ミノンは手を下ろして再び眠りについた。それを合図に氷が消え去り、ついに青の世界が崩壊する。

この腕の中の存在に、一体どれだけの力が秘められているというのだろうか。




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