幾何学的な様な、そうでない様な景色。衰退の象徴である強い陰の気。

無事、テラへ着いた様だ。



X-F青の世界



「ここが……テラなの?」

「……ええ。」

横たわった状態から起き上がる。光に飲まれた後、意識が飛んでしまったらしい。辺りを見回せば、ほとんど皆が揃っていた。唯一欠けていたジタン様もすぐに姿を見せる。

「ダガー! 無事だったのか!」

「ええ、他のみんなも無事よ。」

皆で辺りの探索を始めることになった。満ちる陰の気……滅びの兆しはそこかしこに溢れ、把握しきれない程だ。

ふとした拍子に、金髪で尻尾が生えたジタン様にそっくりな女の子が現れる。現れては消え、消えては現れするその子はまるで私達を導く様で……ついて行くほどにこの世界の中心へ近づいていった。ある場所で、停泊していた<インビンシブル>の瞳を見たダガー様が失神してしまう。全てを奪ったといっても過言ではない存在なのだ――無理もないだろう。彼女を休ませる為、私達は歩調を速めて更に内部へと進んだ。少し息が上がる。

しばらく歩くと、村と呼べる程の大きさの集落に到着した。宿屋を探し、ダガー様を寝かせる。

「……ミノン、おぬしも休むか?」

「え?」

「調子が悪い様に見える。私の思い過ごしなら良いが……。」

「……ありがとうございます。少し、頭が痛くて……。」

覚悟はしていたし、息が上がる程度で行動に支障を来す程ではないため、口には出さなかったが……気の流れが乱れやすい私は、この世界の強すぎる陰の気に中って頭痛がしていた。隠していたつもりだったけれど、悟られてしまった様だ。

「やはりな。少し休め。」

「……はい。」

外套を脱ぎ、横になる。軽微だった痛みは徐々に強まって行き……衰退を身を以て感じさせられた。



目を開けると、一面真っ白だった。一瞬で、どこなのかを理解する。現実味のない世界。ふわふわとした浮遊感。ここは……!

「……美音。」

「優輝!」

会いたかった懐かしい姿に飛び付く。やっぱり感触はなかったけれど、確かにそこにいることはわかった。夢の世界は繋がっているのだ。

「一目で分かったぞ。お前……やっと、元のお前に戻ったんだな。」

「うん! みんなね、良い人なんだよ。私のこと……わざわざ心の中まで来て、説得してくれた。」

「そりゃ、恵まれたな!」

優輝に会えた嬉しさがきちんと<嬉しさ>として理解できる……改めてどれだけ大事なことかを感じる。皆様がくれたもの。皆様が取り戻させてくれたもの。それはとても大きなものだった。

「うん。仲間なら当然らしいんだけどね……私のことをわかってくれようとまでするの。」

「……本当に良かったよ、お前が楽しそうで……。――美音。」

「…………なに?」

優輝が優しい声色から、突然調子を改める。笑顔は消えて、真剣な表情がそこにはあった。

「俺、お前が今いる世界……滅ぼさなきゃならねえんだ。」

「えっ!?」

思わず耳を疑う。何も聞いていなかった。確かに寿命は近いけれど、優輝が――私と対の<闇>の力を持つ存在が、手を下す必要があるとは思えない。

「正確には、滅びるのを止めない、だ。わかってるとは思うけど……あの世界はもうガタが来てるだろ。あとこれは夢見の未来予知なんだけど、もうすぐ大きな衝撃が一気に来る。」

「確かに、もう衰退が激しいけど……。」

「ああ。だから滅びを止めるんじゃなくて、みんな生き残らせる方法を考えろ。」

優輝の言っていることは正しいかもしれない。それでも、私に納得することはできなかった。

「…………嫌だ。」

「美音!?」

「……駄目だよ、だって、ガイアは……皆様の生きる世界は、テラと密接に関わってる! テラを滅ぼしたら……何が起きるかわからない!」

今のガイアの環境は、テラの存在なしには語れない。現文明はテラの侵略後に起こったはずだ。もし両者の均衡の上に成り立っているとするなら――テラを滅ぼせば、影響が出ないわけがない。人類も何もかも、滅んでしまうかもしれない。

「んなこと言ったって、お前……。」

「神様が言ったんでしょ? 伝えて……私が、全部引き受ける。何が起きても、私が守るって。」

「…………。」

「ごめん、優輝……譲れない。」

許される我が儘と許されない我が儘があるのはわかっていた。だけど、全てを曲げてでも――世界の命運に干渉してでも、守りたかった。

「……わかった。」

鼓動の高鳴りを感じていた時、優輝が優しく笑ってくれる。

「お前の、大切なものだもんな。大丈夫、何とかなるさ。……じゃあ、またな。」

「ありがと……またね!」



目覚めると、とんでもない頭痛で起きられなかった。周りには誰もいない。

「……ライラ……私お留守番なの?」

珍しく“外”を見ていた気配があったので、ライラに訊ねてみる。何か興味を引くものでもあったのだろうか。

(ああ。あの猿が帰って来ないとかで、みな出かけて行ったぞ。)

「そう……っ、頭痛い……。」

(ひ弱だな……ほら。)

何か術を掛けられる。楽になったのでお礼を言おうとした時――違和感に気づいた。

「悪く思うな。私も少し出歩きたいんだ。」

油断していたことを実感する。体を乗っ取られてしまっていた。




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