息が上がる。足が重い。
「……ミノン?」
体が熱い。ふらふらする。
「ミノンッ!」
ふっと地面が近くなった。
W-J発熱
「どうした!? しっかりしろ!」
倒れた私を抱き起こすと、フライヤ様は確かめる様に私の額に触れた。冷たく感じる。
「……熱か……高いな。なぜ黙っておった。」
「ごめん……なさ……。」
「仕方ねえことだから気にすんなよ。だけど、今度からは具合が悪い時はきちんと言うんだ。いいな?」
「……はい……。」
息が苦しい。体力が奪われていく。これだけの高熱が出たのはいつ振りだろうか。
「しかし……困ったな。この状況では、長くは休ませてやれぬ。かと言って、歩かせるのは無茶じゃ……。」
「できることならオレが抱えてやりたいけど……この敵の多さじゃ……。」
事態を静観していたサラマンダー様と目があった……気がした。沈黙の後、長いため息が聞こえる。
「……貸し一つだ。」
吐き捨てる様な言い方とは裏腹に、掴む手付きに乱暴さは感じなかった。肩に担がれる。
「ありがとな、サラマンダー!」
「…………。」
揺れる視界。霞む思考。
私はいつしか深い眠りに落ちていた。
†
──……力を抑えようとするな。抑制は体の不調を呼ぶ。
──うん。
──その痣も……仕方のないことだ。わかるな?
──生まれついての運命だもの。抑えられない自分が悪いから。
──……どうした? 人らしさが……感じられぬ。感情が……。
──封じたの。もう、弱い私は、いらないから。……行ってきます、<神様>。
次の世界へ。
──……あの子は、自ら心を封じたと思っている様だが……封じたのは記憶……忘れただけだ……茨に呪までかけて……思い出せば、痛みも……ライラ、あなたは何という運命をあの子に定めたのだ……。
暴走。世界一つ軽く吹っ飛ぶ威力。
全てを傷付ける力。
私の意思を超える力。
畏怖され避けられた私。
力を持つことが必然ならば、力を引き出す感情は、弱さを呼ぶ心は――いらない。
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