次の日、私達はシド大公に呼ばれた。



W-H命の期限



私が会議室に入った時には、既に5人が集まっていた。ダガー様とエーコ様は呼んでいないとのことで、ジタン様を待つことになる。

ジタン様はすぐに入って来たので、思ったより早く話が始まった。アレクサンドリアの惨状――そして<クジャ>が奪ったという<ヒルダガルデ1号>に、話す黒魔道士が乗っていたということ。

<クジャ>に対抗するには此方も新たな飛空挺を得なければならないというので、シド大公を人間に戻すことになる。かけられている術は、私には不可解な……というより独自性に溢れた繊細な術で、私の様な者が解くのは難しそうだった。しかし、あのトット先生を解呪の為に呼んでいるという。先生に魔力はない様に思えたが、知識に基づいた術式を用いれば上手くいくのかもしれない。

しかし先生が入って来て間もなく、エーコ様がもの凄い勢いで駆け込んで来た。

「たいへん! たいへん! たいへ〜ん! ……ダガーが……ダガーが……ダガーが喋れなくなったみたいなの……。」



あまり近づくのも躊躇われて、私は階段の下に留まっていた。けれど、ここからでも確かにわかる。間違いなく――ダガー様は言の葉を失っていた。

(……私の、せいだ。)

ぴりっ……と電気が走り始める。

ダガー様の母親の死も、故郷の崩壊も……私が至らなかった為だ。私のせいで、……ダガー様は……。

「……っ!?」

不意に後ろから肩を小突かれ、思わず振り向く。

「……な……なんでしょう……。」

「…………何でもねえ。」

理由を言うことはせず、サラマンダー様はそっぽを向いてしまった。いったい何のつもりだったのだろう。

「……ありがとう……ございます。」

何故だかお礼を言いたくなって、そのまま口にする。

「…………。」

いつの間にか電気は和らいでいた。



次の日、ジタン様がシド大公を人間に戻すのに必要だという薬を集めて来た。知識としてはあれど、薬という手段は思い浮かびもしなかったので……こんなところでも自らの力不足を感じる。

しかし結局、シド大公は人間に戻れなかった。……そして、カエルになった。

仕方なく、外側の大陸にはブルーナルシスという船で行くことになる。何とついて来るらしいシド大公と、“ボス”に同行を命じられたというブランク様、城下町で食い逃げしかけていたクイナ様を合わせ、船には10人と1匹が乗り込んだ。



久しぶりの村は、もぬけの殻だった。

拙いながらも活気に溢れていた武器屋にも、合成屋にも、宿屋にも道具屋にも……誰もいない。

その中で確かに気配を感じて行ったあの丘には、たった一人で288号様が立っていた。曰く<クジャ>が、命の期限を伸ばすことを条件に、協力を要請したらしい。騙されるとわかっていて……ついて行くしかなかった、と。

「……クジャと一緒にどこに?」

「教えられないよ、仲間を裏切ることになる……。」

「じゃあなんであなたはここにいるの!? ……チョコボ舎にもいるって言ったよね?」

チョコボ舎に行くと、ちょうど雛が産まれたところだった。二人の黒魔道士が喜んでいる。この二人も、もうすぐ止まるのだろう……。

ビビ様の熱意に動かされたのか、迷いが晴れたのか、288号様は西の砂漠に<クジャ>の根城があることを教えてくれた。あの城のことだろう。

「僕らもいつか……君のように強くなれるのかな……。」


その「強さ」が力……魔力などであるのならば、私は誰よりも強いことになる。

その私は今、誰よりも弱い。

私もいつか――彼らの様に、強くなれるだろうか。




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