城の中で気配を追って行けば、大して時間はかからずに、召喚獣を抽出されてしまったダガー様を見つけることができた。術で眠らされている様だ。

周りには誰もいない。しんとした静寂が耳を打つ。しかし隠形を解いた瞬間、大きな声が聞こえた。



U-Eアレクサンドリア城



「……ダガー、ダガー! どこだ! どこにいる!?」

「姫さま! 姫さま〜!」

聞き覚えがあると頭が強く訴える。間違いなく、ジタン様とスタイナー様の声だ。

「ダガー様はこちらにいらっしゃいます!」

滅多に出さない大声で叫ぶ。久しぶりに声を出したせいか、喉が少し痛い。

「ミノン!? ……ミノンなのか!?」

「……お久しぶりです……以前は勝手をし、申し訳ございませんでした。」

本当は毎日会っているのだけれど……それは私しか知らないことだ。何をしたのかは知られるべきでないと感じた。――知られたくなかった。

「んなこと誰も気にしてねえよ…! ミノンこそ良かったぜ無事で! ……ダガー、は……?」

「……眠っていらっしゃるだけです。……普通に眠ってらっしゃるのではないので、今は……目覚められませんが……。」

「普通に、じゃないって……どういうことだ!?」

身近で発された大声に、思わず少し肩を震わせてしまう。

「あ、……悪い……。」

「……いえ……。……術で、眠らされているということです。起こそうと思えば、起こせはしますが……。」

「──ミノン殿。何故、その様なことがわかるのでありますか? 姫さまの見た目は……眠っていらっしゃるだけではないか? 姫さまが、術をかけられていると……自分にはわからぬのですが?」

「……っ! ……そ、の……。」

やってしまった。

たった数日とは言えども、自分の本来あるべき姿――力が隣にある日々に、すっかり慣れてしまっていた様だ。うっかり口を滑らせたことに、今さら気が付く。

「ミノン殿……!?」

「……っ……。」

低い声は怒気を孕んでいる様に感じた。わかっている、悪いのは私だ。

周りが見えなくなり出した時にそっと肩を叩かれ、びくりと身体を震わせてしまう。……静かな青い瞳と目が合った。ジタン様が耳元に顔を寄せてくる。

「なあ……言っちまったら、どうだ? ……大丈夫、みんな受け入れてくれるさ。」

唯一疑問に思っていないであろう──私の秘密を知る人に、小さな小さな囁き声でそう言われる。口調は遠慮がちだ。けれど……何故かその言葉には、強い力があった。

「……私が、力を……魔力を、持っているからです。」

背中を押されるように、言葉を唇から滑り出させる。

「えぇっ!? ボ……ボク、知らなかったよ!」

「それは意外であります! 自分は剣士でいらっしゃるとばかり…。」

「私も気付かなかったな。剣も魔法もとは……すごいではないか。」

皆……私を拒否しない。

大丈夫、だった。

「……しかしならば何故、姫さまを起こされないのでありますか? 先程、起こせるとおっしゃっていた様に思いますが……。」

「……っ、それは……。」

力が強すぎて、未熟な私には手加減ができない。だから、不安定な人にかけられた術に手出しすると……逆に傷つけてしまうかもしれない。

言えない、こんなこと……。

「おいおっさん、無茶言うな? 術者つったって何でもできる訳ねえだろ。」

「しかし、姫さまが……!」

「……良いから、少し休ませてやろう。」




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