隼人は葬式に少しだけ顔を見せてくれた。
縋りつくように抱き着いたが、振り解かれて置いて行かれた。
ごめんなさい、本当に遅くて……
後悔ばかりが胸を去来する。
お城は手放さなければいけなかった。
私自身、まだ若すぎて、仕事にも就けていない、ただの子供。
保護されているべき年齢では、流石にどうにもできなかった。
父親の仕事の補填に、母親の借金に、全ては消えていった。
小さな小さなアパートに居を構えて一人静かに暮らす。
何か仕事をしなければならないだろうが、残った遺産でやりくりをして、私自身は学生の身分を充分に利用した。
弟がストリートチルドレン紛いの状況にあると聞いて、一度迎えに行ったが、無視されてしまい、どうしようもなかった。
そんな、惰性で生活していた最中、父親関係の恨みから襲われた。
こんなに時が経ってから? と言いたくなるほどに記憶の彼方に行ってしまっているのだけど……
あぁ、こんな所で人生終わりか、と溜息を吐いた。
まだまだ若いのに、と思いつつも、どこか現実味の無い生活の終わりをただ見つめた。
「――大丈夫か?」
紫煙を立ち上らせる銃を持ったハードボイルドな男性がいることに気付いた。
ふわりと漂う硝煙の香りと、高い割に渋く響く声、黒い影にただただ見つめた。
「あ、りが……とう、」
相手を視界に入れようと落としていた視線を上げたが、目に入ったのはとても小さな身体。
幼児――否、これは赤子だろう。
どこまでも小さい相手に戸惑いをかなり感じながら、呆然と見上げた。
「……泣くな」
また、いつの間に泣いていたのだろう?
ふにふにとどこまでも柔らかい掌で拭われた頬。
ぽふぽふと頭を何度も撫で、泣き止むまでの数分? 数十分? かなりの時間、ただ傍に佇んでいてくれた。
家まで送ってくれた彼の名はリボーン。
零歳児だ、と本人は言っていたが、本物の零歳がこんなことができる訳が無い。
優しく気遣ってくれた彼に感謝と、心の拠り所を求めてしまったのは、それだけ私が疲れていたのだろう。
自分で、とはいえ、家族を亡くし、弟に拒否をされ、住んでいた家を失い、たった一人、放り出されたこの世界で、ポツンと立っている。
そうして一人立ち続けることに限界が来ていたのだろう。
好きという≪想い≫と、私の全てであるとまで思う依存の≪重い≫気持ち。
想いも重いも日々大きさを増していき、支えきれなくなってまできている。
ごめんなさい、ゆるして、ゆるして……
そうしていつの日にか、君に抱かれて眠りたかったけど
(夢は叶わない。)
(私にとってのただ一人だけど、彼にとってのただ一人じゃないの。)