ひぃぃぃぃぃ!! な、なんでこんなことに……


 あたふたと菊さんから頼まれた原稿にペンを走らす。
 なんで合同誌を出すことになったの……?
 流石に焦ってしまう。
 大好きな作家さんと、何故かその原作のBL同人誌を二人で作ることになってしまったことにガタガタと震えが来る。

「そりゃあ、菊さんはBLGLNL何でもござれのネ申ですけど!」

 あわわわっ、と口から魂めいたものを吐きながらペンを走らせる。
 力の一欠片として抜ける訳が無い。
 全力を持って対応せねば!!




「お疲れ様でした、あかりさん」

 完成原稿を何とか手渡したあかりは死に体で喫茶店に倒れ込んでいた。
 容量も大きくなるからと直接データを入れたCDを渡すために来たのだ。
 一応、原稿を上げたのは昨夜の話で、ちゃんと睡眠を取ったため目の下の隈はすでに消えているし、普段通りの姿を取り戻してはいるのだが。

「全力を尽くしましたよ……」

 私にできる限りの全てを費やした、と言うあかりに菊は笑う。

「私の方で入稿してイベントに搬入しますけど、あかりさんの所にも置きますよね?」
「あ、その方がいいですよね……」

 一応いつも通り自分のスペースも取るように応募してあるから、その方がいいだろう。
 そう頷いたあかりに、何部にしますかねぇ、と考え込みながら、二人のお茶の時間は過ぎていった。




「ネ申効果すげぇ……」

 会場にて、菊さんの所に並ぶよりは早いと思ったのか、自分のスペ前に列をなしていた。
 島中なのにごめんなさい。
 隣近所には後で本を持ってご挨拶! と決め、その冊数を避け売り捌く。
 便乗なのか、持ち込んでいた自分の本も売れていき、合同誌が無くなった時点でスペースを離れることにした。
 大部分は菊さんの所にあるので、合同誌の売り切れと向こうにあることを記載した紙と出かけていますという紙を出して紙袋を手に立ち上がる。

「ご迷惑おかけしました…」

 両脇、向かい。
 先程影響が及んでいたと思われる範囲に本を渡して回る。
 羨ましいわね……気に入られてて、なんていう当てこすりめいた物をぶつけられてもこればかりは縁によるとしか言えない。
 義理を果たす意味合いでも配ったそれらを終えると、菊さんの所に出向く。
 こちらとは違って人手が足りないということは無いだろうけれど……

 売り切れた、という話をすれば残り少しだと言われ、自分の分の確保をしてあるか、と尋ねられた。

「あぁ!! 忘れてました」

 そこまで気が回らなかった、と呟くと、菊さんが数冊差し出してくる。

「まだここには少しありますから」
「ありがとうございます」

 迷惑をかけてしまったな、と謝り、終わった後に合流する約束をし別れる。
 スペースに戻る前にスタッフの方に列整理をしてもらっていたことにお礼を言いに行き、戻る。
 戻った後はいつも通りのまったりしたイベントだった。




「「お疲れ様でした!」」

 乾杯をし、売上を計算間違っていないか確認して返した。
 打ち上げ自体はこの後居酒屋で売り子さんたちも交えてすることになっているが、その前に休憩をとコーヒーを飲みに来ていた。

「差し入れのお菓子なんですが」

 忙しくて渡せませんでした、と小さめの紙袋を手渡した。

「すみません、私何も……」
「いえいえ、これは私の趣味ですから」

 ちょっとしたお菓子作りは趣味なので、と気にしないでと言って渡してしまう。

「ありがとうございます」
「つまらない物ですが」

 笑ってそう言い、コーヒーを飲み込む。

「今度のイベントでまたやりませんか?」
「いやいや! もういいです……」

 流石にネ申と合同誌とか、もう当分いいです…………


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