今日は男性向けの日だ。
 普段はここに飛び込まないことにしている。
 流石にちょっと…………覚悟が足りなくて。
 だから、いつもは書店通販で買っている。
 でも、今日は――

「新刊セット下さい」

 目当てのスペースの新刊セットを買いに来ていた。
 つまりは、本田菊さんの、所へ。

「松崎、さん?」
「はい。こんにちは、本田さん」

 これ、差し入れです。
 持ってきていたお菓子を手渡した。
 家に帰ってから急いで作った手作りなのです、味は大丈夫です。

「じょ、女子の手作り……」

 何か萌えでも引き出したのか、喜んでくれたようでホッとした。

「松崎さん、先程買ったの――」
「あぁ、大丈夫ですよ。これでも成人してますから」

 見た目若く見られてたのかな、と思い急いで免許証を出す。
 流石にさっき新刊セットを買ったのだから年齢確認をされるのは仕方ない。

 そう、18禁エロゲの同人誌(勿論18禁)なのだから。

「松崎さん、やるのですか?」
「本田さんの影響でしたけどね……」

 月刊誌で不定期連載されていた話に嵌って、二次創作をしていた時に知ったのだ。
 男性向け18禁エロゲの同人誌を今も出している、と。
 その関係で出されていたエロゲにも手を出したし、同人誌もどうにか手に入れていたわけだ。

「それは――申し訳ありません」
「あぁ、私から好きでやったことなので、謝らないで下さい」

 私、本田さんの絵も話も好きなんですから。

「あ、ありがとうございます!」

 どうしても伝えたかったのだから……喜んでもらえると私も嬉しい。
 でも、もう少しだけ、時間もらってもいいでしょうか?

「本田さん、読んだ本の感想を言いたいので、今度時間がありましたら、ご連絡下さい」

 そっと用意してきた携帯のアドレスを書いた名刺を手渡し、混んでいるスペースから去ることにした。
 連絡を待つだけ、は少し怖いけれど、頭を下げて帰った。



 夕方、来週の日曜日にお茶でも、という連絡が入って私は部屋の中で踊った。

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