ベリーの書いたプロット







地下から上がり、少し経った頃。
元の生活に比べれば随分暮らしやすいせいなのか、それとも環境への順応性が元から高かったのかはわからないが、リヴァイは調査兵団での暮らしに、自分でも驚くほど馴染んでいた。
ただ困ったことといえば、地下の生活で文字を読み書きする習慣が皆無であったため、任された執務で苦戦をしていた。人への頼り方を知らないリヴァイは、見様見真似でどうにか執務をこなそうとするも、一人ではどうにもならないこともあり限界を感じる。
「お節介かもしれないが、読み書きを習ってはどうか」
エルヴィンはいつ彼が頼ってくるかと待っていたが、一向にその気配がないことと、そもそもそんな男ではなかったことに改めて思い至り、リヴァイを執務室に呼び出して提案を持ちかけた。渋い顔をするものの、困っているのは事実。誰にも口外しないと約束をさせ、リヴァイは読み書きを習うことに決めた。
多忙な毎日の中の週に二回。夕方からの僅かな時間ではあったが、リヴァイはエルヴィンから教えられた場所に向かう。兵団服ではなく私服に着替え、ウォールローゼのとある民家を訪れると、そこには自分と同じかそれより少し年齢が下の女性が待っていた。
「エルヴィンさんから話は聞いています」
人懐っこい笑みを浮かべ、彼女はリヴァイを招き入れようとしたが、リヴァイはここが女一人暮らしの家であることと、他人のテリトリーに足を踏み入れることに戸惑う。しかし今度は苦笑しながらもう一度『どうぞ』と声をかけられ、ここで帰るわけにもいかずに彼女の言うがまま家に上がった。
彼女は学校の教師でもあるが、事情があって学校に通うことのできない子どもたちに、読み書きを教えているらしい。エルヴィンとは歳の離れた幼馴染で、兄妹のように育ってきた。彼の父が亡くなり、訓練兵、そして調査兵になってからは疎遠になっていたが、突然の依頼に驚いたと話した。
気に入らなければやめればいいとエルヴィンに言われ、自身もそう思っていた。しかし彼女はリヴァイの人となりをエルヴィンから聞いていたのか、それとも観察眼があるのか、存外居心地よくその時間を過ごす。教え方に無駄がなく、実際執務でも書き損じをすることが少なくなっていた。その頃には世間話をするくらい、気さくに会話をする仲になり、彼女の家を訪れる際には小さいながらも手土産を用意するまでになる。
そこまでいけば、自分が相手にどんな感情を持っているかなど理解できる。しかしエルヴィンとの思い出を楽しそうに語る彼女を見ると、自分が入り込む余地がないのではないかと、膨らみかけた想いにそっと蓋をした。
そして彼女の元を訪れる最後の日が来た。
「随分世話になった」
一通り読むも書くも苦労なくこなすことができるようになり、リヴァイはもうここに来ることはないのだと、数か月を振り返る。
「これをあんたに」
懐から出したのは一通の手紙。リヴァイが生まれて初めて人に宛てたものだった。(内容はおまかせ!!!)
驚き手が出ないでいると、リヴァイは彼女の手をとり、それを渡す。そして彼女はその手紙を……。







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