今の日常 13.幼馴染みと夢     5/8
 



「なぁ、白蘭」
「なんだい、綱吉君」

二人だけの部屋。
綱吉は畳に横になり行儀悪く本のページをめくっている。その隣では白蘭がぼんやりと窓の外を眺めている。

「お前、俺とユニの事好き?」
「大好きだよ」

外を眺めたまま、白蘭はさらりと答えた。しかし、答えてから怪訝そうに綱吉を見る。

「……え?何。何かあったの、綱吉君。これから僕、愛の告白でもされるのかい?」
「日頃お前に抱いている怒りの告白をしてやろうか」

それは遠慮するよ。
白蘭は窓の方に向いていた体を綱吉に向け、窓が背後に来るように座る。

「いきなりの質問の理由を聞きたいな」
「いやぁ、理由はすっごいくだらない事なんだけどさぁ」
「くだらないかどうかは僕が決めるよ」

綱吉は読んでいた本を閉じ、横に置く。しかし、起き上がることはなく天井を見詰めている。

「夢……でさ」
「夢?」
「白蘭が俺等を殺そうとしてんだよね」
「それは嫌な夢だね」
「だよなぁ。しかも意味分かんない夢でさ」
「僕が君達を殺そうとする以上に意味が分からないのかい?」
「うん。俺等、死神じゃなくて、現世の人間なのよ。そのくせに俺はグローブで戦うし、白蘭は背中から翼生やすし」
「綱吉君」

白蘭は真剣な顔で言った。

「疲れているのかい?」

スパーン。
綱吉が白蘭の頭を叩く音が綺麗に響いた。

「真面目に話してんだよ」
「だからって叩かないでよ」

痛みはほとんどなかったのだろう。白蘭が痛がる様子はない。

「僕が二人を殺そうとする…ねぇ」
「しかも、桔梗さんやザクロ、ブルーベルもいてさ。森なんだけど、其処で戦ってんの」
「森かぁ。いつもの訓練をしている森しか思い付かないね。他には知り合いはいるのかい?」
「ん?確か獄寺君や山本、リボーンとかザンザス兄さんとか、嗚呼、雲雀さんもいた気がする」
「ワオ!知り合いばかりじゃないか!」
「そうなんだよ。しかもリアルな夢だからさ、ちょっと気になって」

綱吉は白蘭と向かい合う様に座る。その顔には気負った様子こそないが、いつもの様な覇気は感じられない。その夢である程度参っている様だ。

「ふーむ、もしかして、パラレルワールドって奴じゃないかい?」
「パラレルワールド?」
「そう。確か随分前に君のお祖父様とルーチェが話していたことなんだけど……」

この世界は一つではない。
横に世界は広がっており、其処では己とは似て非なる者達が暮らしている。

「……似て非なる者達…ね」
「それを君は見たんだよ」
「その世界では、白蘭が俺を殺したがってるの?」
「嫌な世界だね」
「本当だよ」

綱吉と白蘭は同時に溜め息をつく。

「実はさ……」
「ん?今度はなんだい?」
「白蘭が俺等を殺そうとしている夢、それだけじゃないんだよね」
「嘘ォ」
「しかも、其処では『殺そうとしている』じゃなくて『殺している』なんだよ」
「本当に嫌な夢だね」
「嫌な夢だろう?」

綱吉は下を向いて、白蘭と目を合わそうとしない。

「友達になれば、お互いがどんなに良い奴か分かるのに」
「お前、良い奴か?」
「あれぇ、酷いよ、綱吉君」

白蘭はけらけらと笑う。綱吉も釣られた様に少し笑った。

「……友達になれば、殺し合わないで澄むのにな」
「僕等は友達じゃないか」
「……うん」

綱吉は目を閉じた。

「……うん」

確認するかの様に、祈るかの様に、綱吉はもう一度頷く。

「綱吉君」
「なんだ、白蘭」
「ユニに会いに行こうか。それで、三人でお茶しよう」
「白蘭……」
「嫌な夢は、みんなと過ごして忘れてしまえば良いよ」
「……そうだな」

準備してくる。
そう言って綱吉は立ち上がり、部屋から出て行く。残されているのは白蘭だけだ。
白蘭は、再び外を眺める。

「綱吉君。それは夢だよ」

そして、独り呟く。

「『この世界』で、僕は君達と戦う事はない」

そして、彼は笑った。

「だって、僕等は友達だからね」

その笑みは、世界を愛する者の様に晴れやかだった。







**********

ツナの見た夢は未来編の最終決戦の場面。
それ以外は、他のパラレルワールドの場面。

ザンザスの設定?そうです、皆様の予想通り。考えてません←(2011年10月現在)
いつか登場するかもね。



君達は友達だよ。
白蘭が覚えているか否か−−どちらでしょうね。



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