今の日常 11.二人目の幼馴染みと幼馴染み 4/8
「るんるんるん」
上機嫌な顔で隣を歩く男が一人。どうして俺はこの男と知り合いなのだろうか。
「あれぇ?綱吉君、どうしたの?浮かない顔して」
「お前のせいだよ」
「あははは、そんなこと言わないでよ。僕だって傷付くよ?」
嘘付け。沢田綱吉は心の中で思った。
「……はぁ」
本当、どうしてこの男と自分は知り合いなのだろう。
隣に歩くは、真っ白な白髪を惜しげもなくさらし、この世にはつまらないことなどなにもないと思っている様な笑顔を浮かべる男だった。
「……はぁ」
自分とこの男は知り合いだ。そして世間一般的には――。
「どうしたの綱吉君。悩みがあるなら幼馴染みの僕に話してごらんよ」
「いや、大丈夫だよ、白蘭」
綱吉と白蘭は、世間一般的に見れば、長年に渡る幼馴染みだ。
「……ユニが恋しい」
「ん?何か言ったかい?」
「いや、何も」
ここにはいない、もう一人の幼馴染みを想った。
十二番隊のとあるラボの扉を開けると、そこにはスパナと入江正一が目の下に隈を作りながら作業をしていた。
「あっ、来たかい綱吉君」
「ん、ボンゴレ。グローブの調整は終わっている」
「ありがとう、スパナ。ごめん、正一君」
「?ごめんって、何でだい綱吉君」
「ハロー、正ちゃん!」
綱吉の後ろから顔を出し入ってきたのは、笑顔満点の白蘭だ。
「……」
「あれ?正ちゃんどうしたんだい?」
正一は白蘭の顔を見た途端に固まった。そして……。
「ぐはっ」
「あ、正一が倒れた」
「しょ、正一くぅぅぅぅぅん!」
「あは。いつも通り正ちゃんは面白いなぁ」
白蘭はそう言って笑う。
白蘭ショック(?)で倒れた正一は、そのままスパナと綱吉の手により隣の部屋のソファに寝かされた。仮眠室のベッドで休ませないで良いのか訊いたら、すぐに目覚めるだろうので良いのだそうだ。流石スパナ、慣れている。
「全く、正ちゃんも相変わらずだな。僕を見て倒れちゃうなんて。きちんと体調管理が出来ていない証拠だよ」
「いや、お前のせいだろ」
「何でも人のせいにしちゃいけないよ、綱吉君」
そう言って白蘭は、一人で勝手にスパナの飴を食べている。流石正一が倒れても手伝わずに放置した男。
ゴーイングマイウェイ一直線だ。
「僕が推薦状を書いたお陰で、正ちゃんは十二番隊に移籍できたんだから、感謝されないと」
「そう言えば、正一君、元は白蘭の組織所属だったな」
「ん。うちもそう。推薦状には感謝している」
「スパナ君みたいに正ちゃんも素直になれば良いのに」
素直になれないだろう。だって白蘭相手だ。
「綱吉君、何か失礼なこと考えてない?」
「イエ、ナニモ」
「片言が白々しいよ」
「それが俺だろ?」
「それが君だから困った物だよ」
その後、綱吉達は笑い会った。
スパナはコーヒーを持ってきてくれる。白蘭は二つ目の飴を勝手に取り出す。スパナはそれに何も言わず、綱吉も飴を渡す。
うん。たまには白蘭と此処を訪れるのも悪くないかもしれない。
一時間後。
正一が目を覚まして部屋に戻ってきた。
「嗚呼、酷い夢を見た。白蘭さんがまた此処に来る夢だ」
「ヤッホー、正ちゃん!」
「畜生正夢か!!」
本当に白蘭と来ると此処は飽きないな。
綱吉は冷めたコーヒーを啜った。
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白蘭は綱吉のお祖父ちゃんの組織との同盟組織のボス。
過去、二つの組織の抗争一歩手前を止めたのは、まだ子供だった綱吉と白蘭だったとか。
そんな妄想。
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