今の日常 3.天才少年と新席官     1/8
 




「日番谷隊長、追加の書類持って来ま…」

十番隊三席沢田綱吉はノックをしてから隊長室に入った。
中の隊長と副隊長の机には書類が置かれている。しかし、座って決裁をしているのは隊長だけ。
これはどういうことだ。

「おう。そこに置いておいてくれ」
「…隊長。乱菊副隊長は?」

ピキ、と日番谷の額に青筋が浮かぶ。その様子から察するに、彼女はいつもの様に逃げたらしい。

「乱菊さんも仕方ない人だなぁ」
「あいつは仕事を何だと思っているンだ…」

綱吉は持ってきた書類をどさりと副隊長用の机に置いた。

「隊長は、この乱菊さんの書類もやっているンでしょう?」
「たまにな。期限を過ぎて一番困るのは俺らじゃなくて部下だ」
「真面目だなぁ」

話をしている間も日番谷の手は止まらない。綱吉は書類を一枚ぺらりと取る。

「そう言えば、隊長の彫刻が載っている雑誌見ましたよ?『華麗なる結晶』でしたよね?凄かったです」
「そ、そうか?」

日番谷はいきなりの言葉に目線を上げて綱吉を見る。彼は丁度中央にあるソファに座る所だった。
何枚かの書類をソファの前のテーブルに置いて。

「…何やってんだ?」
「何って、書類仕事ですよ」

綱吉は一枚の書類を手に持つ。

「大丈夫ですって。サインをすれば終わりの所までやるだけです」
「えっ、いや…いいのか?お前の仕事は」
「嗚呼、俺の書類はもう終わりました」
「はあ!?」

日番谷は驚きの声を上げた。綱吉の仕事は、他の隊の三席と同じ量だ。十番隊だけ少ないという事はない。今の時間は昼が終わった頃。本来なら少なくとも夕方までは掛かるはずだ。

「俺十一番隊にいた時、ほとんどの書類を俺ともう一人で片付けていたンです。更木隊長は絶対やらないし、草鹿副隊長も同じく。いやぁ、凄い量でしたよ」

綱吉は一枚一枚確認し、何かを書いてすぐに次の書類に手を伸ばす。

「そんなことやっていたから、書類仕事得意何です。あっ、好きではないですよ?ただ…」

綱吉は手を止めて日番谷を見る。

「大量の書類に囲まれているのって嫌ですよね?」
「まぁ…」
「それを溜めているのは自分じゃないのにって、思いますよね?」
「…そう、だな」

俺もです。

綱吉はにっこりと笑ってから、書いた書類を整えた。

「期限が本当にやばい書類はやっておきました。数枚だけみたいでしたよ?隊長の日頃の努力の賜です。残りの書類は乱菊さんに任せましょう」
「助かった。サンキュな」
「いえいえ。隊長は真面目に仕事をしてくれるからです。俺は乱菊さんを連れてきますね」
「どこにいるのか知ってるのか?」
「いえ?全然」

綱吉は手を横に振りながら否定する。ではどうやって連れてくるというのか?

「俺、人捜しも得意何です」
「…どういう事だ?」
「まあ、すぐ分かりますよ。連れてきたら、椅子に縛り付けてやりましょう。もう逃げられないように」

綱吉は先ほどの笑顔よりも清々しい笑顔で執務室から出て行った。



彼が縄で縛られた乱菊を連れてきたのは三十分後だった。







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十番隊異動後の仕事



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