昼間の喧噪が嘘のような静けさ……などというものは、今夜の真選組には無い。
宴会ともなれば、隊士の欠席割合はほぼ零となる。朝の会議でもこれくらいの出席率でいて欲しいものだ。

「がはははは!」
「ぶふふふふ!」

よく言えば男らしい、悪く言えば下品な大笑いが部屋の彼方此方から聞こえる。皆すっかり酔っていた。

部屋の中には獄寺と山本もいた。
彼等は酒を飲んでいない。進められたが、未成年だからという理由で断った。山本は本心からその理由で断ったが、獄寺は違う。酔っぱらい相手に飲めるか、と内心では思っていた。

「…何で俺等がこんな所にいなくちゃいけねぇんだよ…」
「すげぇ酒臭ぇのな…」
「俺はもう部屋に戻る」

獄寺は立ち上がろうとする。早くこの部屋から出て行きたかったが、そうはいかないらしい。立とうとする獄寺の肩を掴み、再び座らせた者がいた。

「主役がどこに行くンでィ」
「主役って…」
「これ、ただ騒いでいるだけじゃ…」

そう、この宴会の名目は新入隊士の歓迎会。つまり獄寺達が主役だと言っても良い。
しかし、最初に局長の言葉で祝われてから、他の祝いの言葉を掛けられても、酌をされてもいない。酌といっても烏龍茶だが、彼等は自分で注いでいる。

「これ、理由を付けてただ飲みたいだけじゃねぇか」
「まぁ、そう言いなさんな。ほれ、飲め」
「だから沖田さん、俺等未成年ですって」
「畜生…十代目もまだ見つかんねぇのに…」
「あぁ、そういや明日で一週間じゃねぇか」

彼等がこの世界に来てもうじき一週間。それはつまり、綱吉が行方不明になって一週間という事だ。

「まぁ、明日には山崎が新しい情報持ってくンだろ」
「またデマだったらどうすんだよ」
「ラケット折る」

沖田は自分が持っているコップをグイッと傾ける。彼も未成年のはずだが…警察がそれで良いのだろうか。

「一週間…そう言えばババ抜きの邪魔されたンだっけ」
「あぁ?ババ抜き?」
「一対一の真剣勝負。一時間にも及ぶ戦いの決着が間近…って時でしたねィ」
「一対一でババ抜きって…楽しいンですか?」
「山本、ババ抜きを笑う奴はババ抜きに泣きますぜィ。あれは彼の有名なサンドイッチ伯爵が片手でトランプをやるために…」
「混ざってる混ざってる。可笑しいのが混ざってる」

獄寺は呆れた様にため息をつく。その解説でどうババ抜きを説明する気なのだ。

「馬鹿らしい…」
「獄寺は絶対ェ勝てねぇ魔の競技だ」
「あぁ!?」

その評価には納得出来ない。獄寺は沖田の言葉に食い付いた。

「てめぇはババ抜き弱そうだ。理由は幸薄そうだから」
「何だと!?てめぇ何ぞに負けるか!十連勝してやるよ!」

売られた喧嘩は買う主義。それはトランプだろうと異世界だろうと変わることはない。

二人のババ抜きから始まり、いつの間にか部屋での宴会はトランプ大会になっていた。
全員でのババ抜き。それはいい大人が、と言いたくなる光景だった。しかし、近藤には異世界から来た彼等の年相応の姿に見えた。


因みに。
優勝したのは、配られた瞬間に手札が揃って終了した山本だった。





「何故そこで山本!?」

いきなりの綱吉の発した言葉。
銀時は驚いて綱吉を見るが、彼はよく寝ている。やけにはっきりとした寝言だ。だが寝言でその言葉とは…。

「…何故そこで突っ込み?」

自分達の世界の夢でも見ているのだろうか。
ここに来て明日で一週間。友達も見つからないし、家が恋しいのかもしれない。彼はまだ子供なのだ。

「……」

銀時は酒を注ぎ足す。たまにやる一人酒。
ここ一週間はお預けだった。皆が寝静まる頃にやるこれは、静かに一人やるのが好きなのだが、それが不可能だった。
その理由は綱吉だ。彼も気付いているのだろうが、眠りが酷く浅かった。一人酒をしている人がいたら、あれでは起きてしまう。
今日はよく寝むれているようだ。友達の夢を見ているからだろうか。

「見つかると良いな」

綱吉の友達。話を聞くだけでも彼がどれほど大切にしているのか伝わってきた。

今から会うのが楽しみだ。






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9999HITキリ番リクエスト
銀色アサリの『復活組の再会前夜』でした!

あれ…ツナがほとんど出番がない…?
ツナというよりも銀さんが出てますね…。ツナ寝ているよ。


箏和様、本当に、本当にお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした!
初キリ番リクエスト嬉しかったです!
ありがとうございました!


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