「そんな言葉、気にすることないよ。雛森さんは才能あるから大丈夫。頑張って」
「あっ、ありがとうございます!」

きっちりと姿勢を整えてから雛森は頭を下げて嬉しそうに礼を言う。自信を取り戻せたようで良かった。

綱吉達が注文した料理も運ばれて来て、雛森は残った四杯目を食べながら、食べ終わった乱菊もお茶を飲みながら話に華を咲かせる。

「それにしても、久しぶりねぇ。あんたらが並んでるところを見るの」
「最近忙しかったからねぇ」
「ツナは俺より書類仕事が多いしね」
「まったくだよ」
「あ、あの…」
「ん?どうしたの、雛森さん?」
「二人は仲が良いンですか?」
「双子だしねぇ。仲は良いと思うよ?」
「へぇ、そう何ですか……双子!?」

雛森は持っていた箸をぽとりと落として口をあんぐりと開けている。

「それほど驚かれると少し傷つくなぁ」
「す、すみません!でも、あの、あまり似ていらっしゃらないし、名前も…」
「似てないのは二卵性だからだよ。名字が違うのは僕が母方の、ツナが父方の姓を名乗ってるから」
「正確には爺ちゃんの姓何だけどねぇ。何か二人がそれぞれ力あったみたいで、周りがその名を消したくないとか何とか言って…」
「力って…お二人は貴族何ですか?」
「爺ちゃん達の全盛期は凄かったみたいだよ?百年くらい前かな。俺らは小さかったからよく分からなかったけど、今思うと考えられないね」
「まぁ、もう没落してせいぜい下級貴族ぐらいの勢力だけどね。それでも当時の名残で変に知り合い多いけど」
「複雑何ですね…」

雛森は何だか少し聞いていけないことを聞いてしまった気がして悪いような気がした。しかし、二人は別に気にした様子はない。彼らにとっては大したことではないのだ。

「俺らが双子だって知らない人も多いよね」
「三席と四席だからそれぞれは知られても可笑しくないけど、俺ら二人が結びつくことはないからね」
「あら、そんなこと無いわよ?」

乱菊は心外だという体で身を乗り出す。

「二人のコンビは知っている人は知っているのよ」
「え?何で?」
「ほら、何だったっけな…。もう十年近く前だったかしら?」

乱菊は頭を捻って記憶から絞り出すような形で思い出そうとしている。

「五番隊と十一番隊の合同任務中に急に虚の大群に囲まれて、その時に他のどの隊士よりも多くの虚を二人で倒したって話」
「ああ、あの時か」
「あの時の二人の息が凄く合ってて、ほら、それに二人とも戦闘スタイルが白打じゃない?炎を身に纏って、まるで舞っているみたいだったっていうンで、『双炎舞』って暫く有名だったのよ?」
「何それ。俺知らないよ。誰そんな名前考えたの。」
「僕も。聞いたことないな。何か恥ずかしい」
「あんたら隊が違うし、共闘したのそれだけでしょ?それほど通り名は長続きしなかったのよ。それでも当時は凄かったわよ。その場で戦いを見てた女性死神がキャーキャー言って、一時の人気者。今でもファンの子いると思うわよ」

私らにとって十年なんてつい最近の事だもの。
乱菊はそう言い茶を啜る。そのような話があったとは全く知らなかった二人は初めて知る事に驚きを隠さないでいた。

「まさかそんな話があった何て…」
「自分のその手の話題を聞くのは恥ずかしいね」

そう言って頷き合っていると、新しい客が入ってきた。

「あら?今度は享楽隊長じゃないですか」
「おやぁ、偶然だね。ってあれ?綱吉君じゃないか」
「こんにちは、享楽隊長」
「さっき十一番隊の子が必死で捜してたよ?何でも見付けないと一角君に殺されるって」
「ちっ、一角め。隊士を使って捜すなんて、随分と切羽詰まってるな」

それほど一人であの量の書類を片付けるのは嫌か。

「どうするの、ツナ」
「もちろん逃げる」

どれほど頼まれようと、手伝う気はない。彼はほとんど自分の書類を手伝ったりしてくれた事はないのだし、午前中はしっかり仕事をした。今日はもうやらないと決めたのだ。

「どこに逃げよう」
「それじゃ、雲雀さんの所行かない?アーデル達もいると思うし、喧嘩を止めてお茶でもしようよ」
「それいいね。決定」

そうと決まったら二人は残りのご飯を急いで食べる。早くしなければ捜している隊士に見つかってしまう。
綱吉を見付けたら知らせて欲しいと頼まれていた享楽も、それを微笑ましく見ている。一角には悪いが、ここは久しぶりに綱吉の平和な休暇を願おう。

「それじゃ、乱菊さん、雛森さん、ついでに享楽隊長も、俺らはこれで失礼します」
「僕はついでかい?」
「すみません享楽隊長。ツナに悪気はないンです。善意もないだけで」

フォローにならないフォローをして炎真はお昼の代金を机に置き、綱吉もそれに倣う。

「それじゃ、また」
「また」

素早く出ていく彼らを三人は笑顔で見送る。



外の日差しは相変わらず強かった。


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