出会いが戦場ではなかったら。
二人の関係は変わっていたのだろうか。
それは仮定の話。
太陽は嫌いだ。それは夜兎族全てに当て嵌まる事だろう。
戦場に太陽が燦々と振り付けているのなんか、考えただけで気が滅入る奴がいるくらいだ。個人差はあれど、太陽の光を一身に受けたら干涸らびてしまう。やはり戦場は曇天が好きかな。
「地球も、太陽がなかったらもう少し好きになれそうだけど」
青年は顔に布を巻いて、晴れているのに傘を差していた。
手にも年期が入った布を巻いており、肌の露出はほとんど無い。傘を差して歩いているのも青年だけなので、その通りで青年は少しばかり浮いていた。
「ご飯は美味しいのになぁ。これで日が差さなかったら最高なのに」
青年は差していた傘を少しばかり傾けて、突き抜ける様に青い空を目を細めて見上げる。
「まぁ、だから鳳仙の旦那は地下に潜ったんだろうけど」
俺も街作って潜ろうかな。
一瞬その考えが浮かび名案だとも思ったが、すぐにないな、と考え直した。地下に街など作って其処で暮らしたら、戦場に出られない。夜兎が戦場から遠ざかるなど考えられない。
だから、宇宙海賊春雨として宇宙船を拠点としているのは自分には自然の形なのだろう。一つの戦場が終わったら、次の戦場へ。その戦場が終わったらまた次へ。うん、街は必要じゃないな。
だけど、まぁ、出来るのなら――。
「美味しい物も食べたいよね」
良い匂いがした。右前から漂ってくる。店の暖簾には「たいやき」と書いてある。
確か魚みたいな形をした地球のお菓子だったかな。一度第七師団の団員が食べていたのを一つ貰った(奪った)気がする。しっぽにまで甘いあんこと言うのが入っていて、なかなか美味かったはずだ。
思い出したら食べたくなってきた。この良い匂いは新しい鯛焼きが焼けた匂いだろう。以前の鯛焼きは冷めていたが、出来立てはさぞや美味かろう。今日のお八つの決定だ。
しかし、一つちょっとした問題がある。地球の貨幣なんて持っていない。地球ではどんな小さな物を買うのにも貨幣が必要な事くらい知っている。
Q1
お金がないままどうすれば鯛焼きを食べられる?
A1
「奪う」
「駄目だろうそれェェェェェ!」
すぱーんと綺麗に後ろから後頭部を叩かれた。ほとんど痛くはないが、驚いた。油断していたし、殺気も無かったとはいえ背後を取られるとは。
「はっ、心にツッコミを入れてしまった!?」
「面白いね、君」
叩いたのは青年よりも年下の少年だった。何処にでもいそうな、髪型が爆発している茶髪の地球人だ。
出会いが戦場ではなかったら。
二人の関係は変わっていたのだろうか。
「すみません。本能のままツッコミを押さえられなくて」
「あははははは」
出会いが戦場ではなかったら、二人は笑顔で話したかもしれない。
「お詫びに俺の分の鯛焼きを半分あげますから、店から奪わないで下さい」
「あ、僕頭の方ね」
「あの店はしっぽまで入ってますよ」
出会いが戦場ではなかったら、二人は一緒に鯛焼きを食べたかもしれない。
「君、名前は?」
「沢田綱吉です」
出会いが戦場ではなかったら、二人は普通に名乗り合っていたかもしれない。
「面白い地球人だね」
「貴方は変な人ですね」
それは仮定の話。
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230000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『神威との掛け合い的なモノ』でした。
本編そのままの二人じゃ、掛け合いなんてほのぼの無理だな!と諦めた結果、IFっぽくなってしまいました。だって本編の彼奴等仲悪過ぎですよ。自分でびっくり。
ツナは万事屋のお使い的なので鯛焼き買いにきて、神威と出会った、的な感じです。
出会いの形が違ったら、ツナは誰とでも仲良くなれたかもしれないですね。
今回のリクエストはドングリ様でした。
お待たせして、本当に、本当に申し訳ありません!
リクエストありがとうございました。
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