「ただいまぁ」
護廷十三番隊の希望隊士には、部屋が与えられる。其処で寝泊まりをして仕事をするのだ。そして、自分もその一人。
ずっと其処で過ごしていると慣れてきて違和感もなくなるが、自然と「ただいま」と口にしているという事実を考えると、やはり此処が自分の家なのだ。
「お帰りなさい、ツナ」
沢田綱吉は実家に帰ってきた。
「今回も土日だけしかいられないの?」
「うん」
「もっとまとまった休みは取れないの?仕事ばかりじゃない」
「無茶言うなって。平日に休んだらまた仕事が溜まる。風邪とかなら兎も角、元気なんだから休まないよ」
「全く。ツナもお父さんみたいな仕事人になっちゃって」
あの親父と同じにするな。
綱吉はそう言いたかったが、止めておいた。母親に父親の悪口を言おうものなら、百倍になって返ってくるのは経験済みだ。
「休みは出来るだけ帰るようにしてるんだから、それで勘弁してよ」
「だって、ツナも炎真もあまり帰って来ないんだもの。母さん寂しいわ」
そう言って母は腰に手をやって軽く仁王立ちしている。綱吉はその横を通って家の中に入った。
沢田家の家はそれなりに広い。大貴族だった昔の名残だ。
息子達がいない今、家には母と父しかいないが、寂しくはないはずだ。過去にいた居候が訪ねてきたり、父親が仕事仲間を家に招いたり。それなりに我が家は騒がしい。
今は行方不明の祖父達の頃から、邸やら家やらは友人などの客人が多く訪れる家だったらしい。何でも、当時は四大貴族も訪れていたとか。今では考えられない。
何はともあれ、今日だって誰か訪れているらしい。玄関に靴が置いてあった。
「今日は誰が来ているの?」
「『ヴァリアー』の人達よ」
綱吉は歩いていた足を止めた。
そして、後ろにいる母に振り返る。
「……帰って良い?」
「ツナが帰る家は此処よ」
全くもってその通りなのだから困ったものだ。
「今来た所なの。客間でお父さんが相手してるから、ツナ、会ってきなさい」
ツナに会いに来たのよ、皆。
笑顔で母は言い放った。
「……まぁ、いっか……」
久しぶりに顔を見せよう。
苦手だけど。ちょっと怖いけど。嫌いじゃない人逹だ。
客間が見えた。中からは話し声が聞こえる。
母はお茶を持ってくると言うので別れた。どうせすぐに来るだろう。
一度深呼吸をしようかとも思ったが、止めておいた。会う前に深呼吸をしていたのがバレたら、何と言われるか。
そして戸を開けようと手を伸ばすが――。
「綱吉覚悟ぉぉぉぉぉ!」
戸を蹴飛ばしたのは自称王子。
「甘い」
綱吉は冷静に避けた。
戸は激しい音をたてながら吹き飛ぶ。戸がなくなったことで部屋の中がよく見える。自称王子が蹴飛ばした姿勢のままだった。
「ベル。戸、弁償ね」
「シシシ、ヴァリアーの経費で落とすし問題ねぇ」
「う゛ぉぉぉぉぉい!ふざけんな!」
「だって俺王子だし」
部屋の奥にいる銀髪の剣士がいつも通り大声を出している。
そしてその隣にいる黒髪の男。会うのは半年ぶりくらいだろうか。
「久しぶり、ザンザス兄さん」
「……」
ザンザスは此方を一瞥しただけで何も言わない。これも何時もの事なので気にしない。
綱吉はザンザス達と向かい合う様に座った。
「ツナぁ、帰ったか」
「珍しいね、ザンザス兄さん達が家に来るなんて」
「父さんは無視か!?」
勿論、父さんには目もくれない。
「時間があったからな」
「ボンゴレの方は大丈夫なの?」
「お前が心配する様なことはない」
「そっか」
会話が今一続かないのも何時もの事だ。気にしない。
「ザンザス兄さん、元気だった…って、訊くまでもないか」
「お前はどうだ。仕事は」
「うん。順調だよ。書類仕事にも慣れてきた」
テンションが低い会話。顔は怖いが、心配してくれていた様だ。
その後、彼等は夕飯を食べて帰っていった。
自称王子はシシシと笑いながら。銀髪剣士は大声で。
そして、ザンザスは何時も通りの無表情で。
心配して来たのなら、そう言えば良いのに。
何時も通りの、分かりづらいヴァリアーだった。
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180000HITキリ番リクエスト
黒色アサリで『ツナとザンザスのお話』でした。
本編に出ていないキャラが出るのはいつものこと!ユニもそうだった!
ボンゴレはツナが継ぐ予定の組織的な。
今はボス九代目で、ヴァリアーが幹部的な。
ツナとヴァリアーはそんなに仲悪くないかな?的な。
あまり設定考えていない的な←
今回のリクエストは朱雨様でした。
ザンザス、どうでしょうか…。
リクエストありがとうございました!
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