「右です」
「……正解でさァ…」

沖田が右手を開くと、そこには小銭が握られている。

ここは真選組屯所の沖田の部屋。その一室に沖田、綱吉、獄寺、山本、神楽がいた。
五人も部屋にいると手狭に感じるが、それどころではないのが沖田だ。

「これで十連敗だぜィ…」
「流石です十代目!」
「うーん…なんか、今日は調子が良いのかな?」

小銭が右に握られているか、左に握られているのか、完全なる勘で当てるだけの遊び。だが、それに十連勝している者がいた。
勿論、綱吉である。
この世界に来て日増しに強くなっていく超直感。人が手の中に隠している小銭を当てるのは、戦闘の時に相手の動きを感知するよりも遙かに簡単で、ずっと平和だから綱吉は深く考えずに勝負を受けた。
だが、仕掛けた本人は悔しいモノだ。

「なんで分かるんでさァ…」

沖田は不思議そうに、そして不服そうに右手で小銭を投げたりキャッチしたりして弄ぶ。沖田にしてみればどうして分かるのか甚だ疑問だ。

「だから、超直感ですって」
「その超直感が訳分かんないでさァ。どんな仕掛けになってるんでィ」
「仕掛けというか…種も仕掛けもない特技…でしょうか?」

綱吉も何とも言えない。血族に伝わる不思議な力と説明したが、綱吉にもよく分かっていない。しかし、超直感を持っていない者にとってはもっと不思議な、超能力の様に見えるのだろう。

「ふふふ…」

そこで笑い声がした。勝ち誇ったかの様な、嬉しげな笑いだ。
綱吉が後ろを振り返れば、神楽が腕組みをし、目を閉じて口を釣り上げて笑っていた。

「ふふふふふ…」
「……何が可笑しいんでィ、チャイナ」
「可笑しい?それは違うアル。これは勝利の笑みネ!」

神楽は勢いよく立ち上がり、ビシッと沖田を指差した。

「やっぱりツナは凄いアル!このサドを物とも言わせないネ!」
「え、あの、神楽ちゃん?」
「私がギャフンと言わせたかったアルが、私が出る幕もなかったアル!ざまぁ見ろネ!」
「それは聞き捨てならねぇぜ、チャイナ!」

沖田も負けじと立ち上がり、神楽と対峙するかの様に向かい合う。

「確かに俺はこの小僧に十連敗してるのは認めるが、だからっててめえが勝ち誇んな!てめえは何もやってないだろうが!」
「ツナの勝利は私の勝利アル!」
「どんな理屈だ!」
「ツナと私は一心同体ネ!」

何時の間にそこまでの関係になったのだろうか、綱吉と神楽は。
神楽の暴走はいつものことだが、それにいつもは良く言えば冷静、悪く言えば無関心の沖田も乗るとは。彼等、本当は仲が良いのではないか。

そして、暴走するのは神楽だけではない。

「おい酢昆布娘!誰と誰が一心同体だ!十代目と一心同体なのは俺だ!」
「獄寺君が参戦した!?」
「あははははは!」

いつも暴走するのは神楽だけではない。獄寺も同様だ。綱吉と一心同体などという話をしたら、彼が出てこないはずがない。
山本はいつも通り笑っている。何故に彼はいつも笑っていられるのだろうか。明らかにこれは事が大きくなる前振りだと言うのに。

彼等三人は言い争いをし始めてしまった。山本はそれを楽しそうに簡単に宥めているが、本当に止める気はないのだろう。彼等に悪意がないからだ。
ここでいつも止めにはいるのは綱吉なのだが、もう面倒になっている。また止めるのか。もう止めなくても良いかな。別にこの喧嘩、自分が悪いわけではないし。
止めなくて良いよね?一回くらい休んだって良いよね?うん良い。

綱吉は諦めた様に立ち上がり、人数分のお茶を注ぐ。後ろでは喧嘩が白熱するが、本当にやばくなったら山本が止めるだろう。

「上等だ、表出ろ!」
「決闘アル!」
「望むところだ!」
「望むな!」

そして、決意虚しく綱吉は喧嘩を止めるのだ。表に出ようとする彼等の頭をスパーンと叩く。予想外の攻撃に彼等は反応できず、そのまま喰らう。

「うう…何するネ、ツナ」
「この間屯所で喧嘩して怒られたばかりなのに喧嘩しようとしない!また怒られるのは嫌です!」
「全くだ」

戸の奥から聞こえる第三者の声。その声に皆が振り返る。
戸を開けて入ってきたのは土方と近藤だった。

「また喧嘩始めたら怒鳴っているところだ」
「何でィ土方コノヤロー。立ち聞きですかィ」
「お前等が大声で争ってたんだろうが!」
「ははは、良いではないかトシ。子供は周りを見ずに遊ぶモノだ!菓子持て来たぞ!」

近藤が手に持っていたのは七つの銅鑼焼き。どうやら近藤と土方の分もあるようだ。

「ありがとうございます!」
「今日は何やってたんだ?」

自然に近藤は部屋に入り、綱吉の隣に座る。その近藤の隣には土方が。顔に優しい笑みを浮かべている彼は、まるで一緒に遊んでいる子供だった。

「これでさァ」
「ん?小銭?」
「右手にあるか、左手にあるか。それを当てるんでさァ」
「おお!昔はよくやったなぁ!」
「今、この小僧が十連勝中でさァ」

沖田は悔しそうに綱吉を見て、綱吉は恥ずかしそうに頬を掻く。

「あ?そんなの勘しかないだろ。総悟が弱いだけだろうが」
「んだと土方!ならてめえがやってみろ!出来なかったらお前の奢りでアイス人数分な!」
「上等だ!掛かってこい!」
「掛かっていくのは俺なんですがぁぁぁぁぁ!?」

ああ、喧嘩が止まったと思ったらこんな展開になるとは…超直感でも予想出来ない。
綱吉は渋々神経を研ぎ澄ませた。





まぁ、結果は皆様の予想通りと言いますか。
アイス、ご馳走様でした。







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152000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『真撰組の主要3人組がツナが超直感を使っているところを見て驚く』でした。


新八がいない(笑)。いや、あの子話さなかったからいなくてもいいかな、と。

ツナ、最強ですね。流石ですよ十代目。ツナの超直感は書いていて楽しいです。


今回のリクエストは砂希様でした!
二度目のリクエストありがとうございます!
リクエストありがとうございました!



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