「ひったくりよぉぉぉぉぉ!」

街中を歩いていたら響く声。しかも、かなり近い。
一番に反応したのは神楽だった。

「銀ちゃん、ツナ!行くアルよ!」
「うえぇぇぇぇぇ!?」
「警察に任せておけよ…」

銀時のその呟きを無視し、神楽は颯爽と駆け出す。そうすれば追い掛けるしかない。

「この町でひったくりなんざ、このかぶき町の女王が許さないアル!」

呆れる様な理由だが、当然ながら神楽は本気だ。
神楽を先頭に、後ろにまだ戸惑っている綱吉と、面倒くさそうな銀時が続く。

道を一本反れれば、そこには今ひったくられたばかりと思われる女性が。数十メートルも先には逃げる男も見える。あの男がひったくりなのだろう。

「逃がさないアル!」
「神楽ちゃん待って!」

しかし、神楽は止まらない。そのまま猛ダッシュで駆ける。

「うぉぉぉぉぉ!」

男はチラリと振り返った。後ろの異変に気付いたのだろう。そして、後ろから信じられない様なスピードに追い掛けてくる女の子を見た。勿論、神楽の事だ。

「ちっ!」

男は舌打ちをして横路に入る。神楽を撒く気なのだ。
しかし、神楽も男を逃がすつもりはない。 後を追って横路に入る。

「待つアル!」

右へ左への逃走劇。普段ならすぐに追い付きそうだが、男はゴミ箱を蹴飛ばして神楽の障害物を作ったり、物を投げてきたりしているのでなかなか距離が縮まらない。

いっそ傘の銃を撃ってしまおうか。
神楽は一瞬そう考えたが、頭を振ってその考えを打ち消した。
以前綱吉の前で撃ったら、大層驚かれ、しかも怒られてしまった。そう簡単には撃ってはいけないと。
簡単に撃っているつもりはないが、今は撃たなくともあの男を捕まえる自信はある。なら、撃たない方が良いのだろう。
神楽だって、綱吉に怒られたい訳ではないのだ。
別に、綱吉を怒らせたい訳ではないのだ。

その様な事を考えて前を見たら、男が消えていた。

「しまったアル!」

考えに耽ってしまい、男を見失ってしまった。何処に行ったのか分からなくなってしまった。

前には四方に延びる道。細い十字路だ。一本は今来た道だから除外しても、何処に行ったのか分からない。

右を見ても前を見ても左を見ても男はいない。
神楽は勘で左に行こうとした。



しかし、声が聞こえた。



「神楽ちゃん後ろ!」



その声に導かれる様に反応し、振り返る。
そこには鉄パイプを振りかぶる男の姿があった。右の道の物陰に隠れ、しつこい神楽を倒す機会を待っていたのだろう。
しかし、男の動きは素人だ。気付いてしまえば、どうということはない。

「甘いねェェェェェ!」

神楽の拳が男の顔に綺麗に入った。





「どうしてツナがあと一つの道から来るアルか」

男を捕まえて、警察に引き渡した後。神楽と綱吉は公園にいた。
荷物を取り返してあげた女性が、お礼にとケーキを買ってくれ、それを家まで待ちきれずに公園で食べるためだ。
今回全くと言っていいほど役に立たなかった銀時は、今は飲み物を買いに自販機まで行っている。

「先回りしようとしてね。神楽ちゃんに追い付くのは無理そうだったし」
「先回りって…そんな簡単なものアルか?」

先回りは神楽達の動きを予想しなければ出来るものではない。彼は予想したと言うのか?

「え?んー…勘かなぁ?」

綱吉は困った様に言う。

「ツナ凄かったんだぞぉ、神楽」
「銀ちゃん」
「『俺先回りしますから、銀さんは神楽ちゃんを追って下さい』ってな。神楽だってもう見失ってたのに、どう追えってんだ」
「すみません…」
「謝んな。大活躍だったんだろ?」

銀時はそう言ってペットボトルの飲み物を渡す。

「銀ちゃん、私には?」
「お前はこっち」

銀時はそう言って神楽には小さな缶の飲み物を渡す。

「何で私は缶アルか!私だって大活躍だったアル!」
「お前は先走っただけだろうが酢昆布娘。ツナがいなかったら今頃頭に包帯巻いてるぞ」

神楽は銀時のその言葉に押し黙る。
悔しいが、否定出来なかった。確かに綱吉の言葉がなければ、後ろに迫る男に気付けなかった。つまり、鉄パイプを避けられなかったということだ。
それは、一人ででも捕まえようとした神楽の失態だ。

「それにしても、ツナのその『超直感』てのはすげぇな」
「そうですか?…そうかもしれませんね。なんでも血族にあるらしいですけど…」
「それにしても…『超直感』…どっかで聞いたことがある気が…」
「ドラ○エアルか?」
「違うと思う」

銀時はそう言うが、気にしないことにしたようだ。美味しそうにケーキを食べている。

「銀ちゃんは一つ間違ってるアル」
「あ?」
「ツナは『超直感』がなくとも凄いアル」

銀時は笑って返した。

「知ってるよ」

綱吉は恥ずかしそうに首を竦めた。







**********

130000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『ツナが超直感を使う所を見てみんなが驚く』でした。

ツナの超直感便利ですよね。使い方次第では最強だと思います。
設定としてもおいしいし。

銀時の言葉はプリーモの事を思い出しています。記憶の片隅に。
まだプリーモと綱吉の事を知る前の時です。


今回のリクエストは砂希様でした。
超直感いいですよね。
リクエストありがとうございました。


戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -