「…ガウ…」

小さな獣は、怯えた様に物陰に隠れている。

「…ナッツ…」

飼い主は、困った様に笑うのみだ。





「その指輪は何アル?」

いつも通りに神楽の一言から始まった。
彼女の指差した所には、綱吉の指輪。しかし、ボンゴレリングではない。神楽が指差したそれは、動物の形を模していた。
銀時や新八も神楽の声に導かれた様に指輪を見る。綱吉がボンゴレリングについて話しても、その指輪についてはそういえば触れていなかった。

「ああ、これ?」

綱吉は慌てた様子ではない。つまり、危ない物ではないということだ。彼が危ない物を持っているというのは考えにくいが、万が一ということもある。ボンゴレリングも使い方次第では危ない物といえるのだから。

「これは……んー……説明しづらいな。見てみれば分かるか」

そう言って綱吉は指輪に炎を灯す。オレンジの澄んだ炎だ。

「ナッツ」

そうして、出て来たのは……。

「猫ある!」
「いや、犬だろ」
(……ライオンだって言うべきかなぁ)

苦笑いをこぼす綱吉。神楽は急に現れたナッツに目を輝かせている。

「えっと……天空ライオン(レオネ・ディ・チェーリ)のナッツです」
「れお…ねで…何だって?英語か?」
「たぶんイタリア語です。死ぬ気の炎で動くボックス兵器です」
「兵器!?戦うの!?」
「一応戦えますよ?でも本人がっていうよりも、変形して…」
「変形!?かっけぇアル!」

神楽はナッツに興味津々だ。しかし、神楽以上に興味津々の者…いや、犬がいた。

「…ガウ…」
「ワン!」

定春だ。彼はナッツをくんくんと嗅いでいる。ナッツはそれに怯えているのか、固まってしまっている。

「定春?ナッツがどうかしたアルか?」
「興味深いんだろ。同じ犬だし」
「ライオンです…一応…」

ナッツは綱吉達の言葉に反応してか、素早い動きで飛び上がり、テレビの後ろに隠れてしまった。ひょこりと顔を出し此方の様子を窺っているが、怯えているのは明らかだ。

「ワンワン!」
「定春が何か言っているアル」
「そんな時はこれだ」

銀時は懐から何か機械を取り出す。

「これがあれば犬の鳴き声の意味が…」
「それ以前も出て来ただろ!」
「今回は焼き鳥と交換して貰った」
「良い思い出はないアルナ…」
「え?何?何の話?」

銀時はその機械を定春に近づける。綱吉は初めての光景に目を向けた。

「さぁ、定春。この犬っころがどうかしたのか?」
「ワン!」

定春は吠えた。機械はそれに反応する。
そして映し出された答えは…。



『ぱっと出て来てマスコットキャラの座を奪おうなんて甘いんだよ』



「ガウゥゥゥゥゥ!?」

ナッツの声にも機械は反応した。
映し出された文字は…。



『ひぃぃぃぃぃ!?』



…………。
万事屋には一瞬の沈黙が落ちた。綱吉は苦笑いするしかない。それ以外にどうしろと言うのだ。

「…定春って腹黒だったんですね」
「ナッツはツナに似てるアル」

神楽は定春を撫でながら綱吉の言葉に返した。

「ツナ!定春とナッツと一緒に散歩行くアル!」
「散歩?」
「『だぶるでぃと』アル!」
「意味違くないか?」
「じゃぁ、『だぶる散歩』アル」
「何でも良いけどよ…」

綱吉はナッツの前、正確にはテレビの前にしゃがみ込んでナッツと目線を出来るだけ近くした。

「ナッツ、行くか?」

綱吉はそう言ってナッツに手を伸ばす。
ナッツは最初出てこなかった。しかし、暫くすれば…。

「ガウ」

そっと、ナッツは出て来た。

「行くって」
「やったアル!」

神楽は嬉しそうに笑ったのだった。







**********

102000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『ナッツとよろず屋メンバーの絡み』でした。


初めてナッツを書きました。
彼は登場させる予定はなかったので、リクエストに感謝です。このリクエストがなければたぶんずっと登場しない←
ナッツは書きやすかったです。ツナと性格が似ているからでしょうか?


今回のリクエストはマルミ様でした。
お待たせして申し訳ありません!
リクエストありがとうございました。



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