コンコン

軽いノックだった。十一番隊とは違い、十番隊では真面目にノックをする隊士がほとんどだ。それだけで好感が持てる。

「入れ」

この部屋の主である日番谷が入室の許可を出す。中で仕事をしていた乱菊も、書類を届けに部屋に来ていた綱吉も視線を入り口に向ける。

がちゃり

扉を開けて入ってきた者は、予想に反して隊士ではなかった。
小柄な身体に大きな白い帽子。左目の下には帽子にあるのと同じ紋様。彼女は眩しい笑顔で扉を開けた。
そして、彼女は綱吉の知る人物だった。

「ユニ?」

目を大きく開き、その人物を凝視してしまう。彼女が来る連絡は受けていなかった。何故此処に?

「お久しぶりです、沢田さん」

笑顔を深くし、彼女は会釈をする。彼女に初めに興味を示したのは乱菊だった。

「ユニって…この間来たルーチェさんの?」
「祖母がお世話になりました」
「いえいえ、此方こそ…って祖母!?ルーチェさんお婆ちゃん!?」

思い掛けない事実に乱菊はあんぐりと開いた口を押さえて驚く。彼女は孫がいるようには見えないのだから、驚くのも無理はない。

「でも、何で此処に…あっ、隊長達に紹介しますね。彼女はユニです」

ユニは丁寧に日番谷達に向かって綺麗なお辞儀をする。

「今言ったように、ルーチェさんの孫で、俺の…」
「彼女です」
「そうそうかの…うえい!?何で!?」
「嘘です」
「あらぁ、違うの?」
「当たり前です!ユニは俺の幼馴染みです!」
「と、言うのが嘘です」
「だから何で!?」

綱吉の狼狽した様子を見て、ユニはくすりと笑い、興味津々の乱菊に謝るかのように両手を合わせて言う。

「と、言うのも嘘です。沢田さんの彼女と言うのはとても魅力的なのですが、ただの幼馴染みです」
「あらぁ、そうなの?残念。ツナにこんな可愛い彼女が居たら、良いからかいのネタになったのに」
「ありがとうございます。でも、私がお慕いしている方は他にいるので」
「あら、そうなの?だぁれ?」
「ふふ、秘密です」
「何早速仲良くなってるの!?」

ユニを座らせ、綱吉は人数分のお茶を注いでくる。日番谷達も休憩にしたのか、乱菊は茶菓子を皿に盛り付けた。

「もう…ユニが冗談を言うなんて珍しいね」
「あら、私は冗談嫌いではないですよ?それに…」
「それに?」
「約束を守ってくれない沢田さんに、ちょっとした仕返しです」
「…その…」

綱吉は顔を反らした。ユニの顔が、笑っているはずなのにそうは見えないのは何故だろう。理由は分かっているが、考えたくない。明らかに綱吉のせいだ。

「会いに来てくれると聞いてから、大分経ちました」
「…はい…」
「でも、いくら待っても沢田さんは来て下さいません」
「…その…」
「待てど暮らせど、沢田さんは姿を見せず…」
「…えっと…」
「γに八つ当たりをしても、沢田さんは来て下さらず」
「……」
「私はとても寂しい思いをしました」
「本当に申し訳ありません」

特にγさん。まさかそんな目に遭っていたとは…今度謝りに行かなくては。何時になるか分からないが…。

「ツナ、酷いわね」
「沢田さん、酷いです」
「申し訳ない…」

ユニに非はない様に思われる。これは綱吉が悪い。綱吉は素直に頭を下げた。

「その、俺からも謝る」

日番谷も申し訳なさそうに口を開く。

「最近は仕事が立て込んでいて、沢田にまともな休みをやれていなかったんだ。申し訳ない」
「あら、そんな頭を下げないで下さい。それに、もう怒っていません」

ユニはいつもの様に、幸せそうに笑った。

「何はともあれ、沢田さんに会えたのですから」

ユニの笑顔は、心が救われる。そう言ったのは、確かγさんだっただろうか。その通りだと綱吉は思った。

「今度の休みは、俺から会いに行くよ」
「はい!待っています!」

二人で、幸せな気分で笑い合った。







**********

96000HITキリ番リクエスト
黒色アサリで『ユニが十番隊のツナに会いに来る』でした!


何でこの二人付き合っていないの?とか乱菊達は思っています。
ユニとツナは仲良しが良いですね。心温まる気がします。
これを書いていたら白蘭を登場させたくなりました。ツナ、ユニと来たら白蘭が出てきます。大空三人好きです。


今回のリクエストはかなた様でした!
ユニは書いていて楽しいです。
リクエストありがとうございました!



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