拝啓お母様。

「はい、綱吉君。玉子焼きよ」

絶体絶命のピンチです。





新八の家に遊びに来たのが間違いだったのだろうか…。お昼時に来たのが間違いだったのだろうか…。
悔やんでももう遅い。暗黒物質(ダークマター)は目の前にある。

「えっと…まだ、あまりお腹が空いていないというか…」
「あら?子供はきちんと食べないと駄目よ?神楽ちゃんなんてお腹が空いて泣いてるわ」

隣に座っている神楽は確かに泣いている。しかし、絶対にお腹が空いてではない。綱吉も一緒に泣いてしまいたい。

「……」

新八に無言の訴えを向ける。しかし、新八も冷や汗をだらだらと垂らして玉子焼き(?)を見ている。救いの手は期待出来そうにない。むしろ彼が欲しそうだ。

「ツナ…」

神楽が涙目でこちらを見てくる。どうにか彼女だけでも救ってやりたいが…。

「……くっ…」

このような八方塞がりの状況を打破する手立てが思い浮かばない。このままでは地獄を見ることになる。

「さぁ、どうぞ。たくさん食べてね」

可哀想な玉子焼きが近づいて来る。もう駄目だ。
諦めかけたその時。



「お妙さぁぁぁぁぁん!」
「出やがったなストーカー野郎!!」



天は綱吉に味方した。
というか、デジャヴというやつだ。あの時は銀時のストーカーだったが、今回はお妙のストーカーで玉子焼きの魔の手から救われた。
今この瞬間だけストーカーに感謝だ。

「あぁ!玉子焼きが台無しじゃない!」

さようなら玉子焼き。君の勇姿はその姿になった時点で終わっていたが、君の事は忘れない。

「仕方ない、また作って…」
「大丈夫です!新八君が作ってくれた味噌汁と魚だけで十分です!」
「そうアル姉御!気遣いは無用アル!」

絶妙のコンビネーションでお妙を止める綱吉と神楽。二人の息はどんどんとピッタリになっていく。

「あら?遠慮しなくていいのよ?」
「いえ!それには及びません!」

必死の訴えが通じたのだろう、お妙は納得してくれた。

「そう?残念だわ…」

神楽とがしりと手を握り合う。今度は喜びで涙が出そうだ。

「それにしても…」

綱吉は近藤に視線を向ける。

「近藤さん、どうしてまたここに?」
「このストーカーがここに来るのはストーカーだからと言う理由だけよ?」
「いや、そんな一刀両断しないであげてください…」

流石に綱吉はそこまで毒舌にはなれない。
近藤は顔を押さえながら、もう片方の手でとある物を取り出した。

「これを…」
「これって…バーゲンダッシュ?」
「これを…届けに…がふっ」
「近藤さん!?」
「届けられて…良かった…」

近藤の腕はぱたりと落ちた。残ったのは渡されたバーゲンダッシュが四つ。綱吉達皆の分を持ってきてくれたのだ。

「近藤さん…ありがとうございます。デザートに頂きます」
「うん、是非食べてくれ」
「復活早ッ!?」

その後近藤はお妙の手により星になった。

「全く…ストーカーの相手も大変だわ」
「はは…そうですね」

綱吉が乾いた笑いをすると、釣られたようにお妙が溜め息をこぼす。
静かになったと思ったら、玄関から物音がした。

「おーい、買ってきたぞ」
「あっ、銀さんが帰ってきた」

入り口の襖を開けて入ってきたのはビニールを持った銀時だ。

「おら、デザートも買ってきたぞ」
「やった。でも、二つになっちゃいましたね」
「二つ?…て、血痕が…」
「気にしちゃ駄目です銀さん」
「そうアル銀ちゃん」
「いつものことですよ銀さん」
「何その息があった言葉の羅列。まぁ、想像は付くけど」

銀時はビニールを横に置いた。

「まぁいいや。食べるか」
「はい」



「いただきます」







**********

68000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『ツナが慕われている感じ』でした。


あれ、慕われて無くないか?
神楽がツナを頼っている感じを出したかったのに、結局ツナは何もしていないし…。


今回のリクエストは匿名様でした。
遅くなってしまい、申し訳ありません。
リクエストありがとうございました!


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