よく晴れた昼下りに、綱吉と神楽は公園で遊んでいた。いつの間にか他にも遊んでいる子の数は増えており、今では公園にいる小さな子供達皆でドロケイをしているのだ。
ひたすら逃げるドロボウ役の子と、追いかけるケイサツ役の子。それはただの普通の遊びのはずなのだが…。

「待ちやがるネェェェェェ!」
「いやぁぁぁ!!」

阿鼻叫喚地獄絵図。神楽は年下の子供にも手加減はすることはなく、ケイサツとして次々と捕まえていっている。

「いけぇぇぇ!神楽!やっちまえ!」
「そうだそうだ!…あれ?今まで捕まえていたドロは?」
「あぁぁ!逃げてる!」

そして神楽が派手に捕まえている間にこっそりと綱吉が近づき(決して影が薄いのではない。決してない、と本人否定)、ドロとして他の皆を逃がしているので振り出しに戻っている。

「あっ、ツナ!またお前アルか!?」
「逃げろォォォォォ!」

蜘蛛の子を散らすように逃げていく綱吉達ドロボウ班。しかし、神楽達ケイサツ班も学習する。

「ドッキリマンチームは鉄棒方面、バックリマンチームは滑り台方面に回り込んで、ザックリマンチームと一緒にドロを追い込むネ!ツナは私が押さえるアル!」
「何その子供とは思えぬ連携プレイ!?」

何時の間にチーム分けしたのか、ケイサツ班は「ハッ、警部!」などと言ってノリノリで散っていく。そして、勿論綱吉に向かって来るパトカー(戦車)が一人。

「大人しくお縄に付くアルゥゥゥゥゥ!」
「いやぁぁぁぁぁ!」

砂埃を上げながら迫ってくる神楽から、綱吉は必死に逃げる。しかし、それも何時まで保つのか分からない。
綱吉が今まで危なくなったら味方を逃がしていたので、捕まれば実質ドロの負けの決定だ。第一、ドロボウ班に時間切れ以外で勝ちがあるのだろうか。今度問うてみよう。
これを逃げ切れなかったらそれはただの負け惜しみになるが。

「そんなの格好悪過ぎだぁぁぁ!」
「逃がすかァァァァァ!」

神楽は綱吉に手を伸ばそうとする。しかし、間に他の子供達が入った。

「ツナをやらせるか!」
「俺等がツナを守るんだ!」
「みんな!」

何人かの子供達が神楽に立ち向かっていく。

「俺達が時間を稼ぐ!そのうちに!」
「ツナ!また俺等を助け出してくれよ!」
「待ってるからな!」
「俺等の屍を超えていけ!」
「必ず…必ず助けるから!」

綱吉は涙を拭いて走り去る!後に子供達を残して走り去る!振り返ることはしなかった…それが命を賭けて時間を稼いでくれた子供達への礼儀だ!

「何処のショート劇場アルかァァァ!!」

綱吉は確実に歌舞伎町に染まっていた。





「…全く…何処行ったアルか?」

数分後。神楽は広い公園を一人で探していた。残っているのは残り綱吉を含めて三人。もうじき綱吉が活動を始める頃合いなのだが…。
そう思っていると、物陰から怒鳴り声が聞こえた。

「お前が悪いんだろ!勝手に付いてきたから!」
「だって…だって…」
「あぁ!うるせぇ!」
「う…うわぁぁぁ!」

泣いている子供は、よく見れば膝小僧を擦り剥いている。怒っている子供は、さらに怒鳴りそうだ。
これはいけない。神楽は出て行こうとした。しかし、それよりも前に出てきた者がいた。

「どうしたの?」

綱吉だ。綱吉が他の物陰から出て来た。しかし、彼はどうやら状況が掴めていないようだ。急いできたのか肩で息をして、二人を交互に見ている。

「う…何だよ。俺は何も…」
「うわぁぁぁん!」

子供は泣いているし、状況が説明できる状態ではないのだろう。綱吉はぱちくりとした後、子供達に近づいた。

「うっ…」

怒っていた男の子は怒られると思ったのだろう。端から見れば、子供を苛めていたようにしか見えない。男の子は強く目を瞑った。
しかし…。

「え…?」

男の子の頭には優しい掌が置かれた。泣いている子供の頭にも。
綱吉はにっこりと、安心させるように笑った。

「傷、洗おう?」

綱吉はそう言ってから振り返った。

「神楽ちゃんも、手伝って?」

しっかりと彼にはばれていたらしい。神楽は気まずそうに出て行った。





「きちんと言えば、分かってくれるよ?」
「大人は分かんない奴ばっかだ」
「でも、分かってくれる友達だっている。問答無用で怒られるなんて思わないで」

綱吉は軽く傷を拭いた後、絆創膏を貼ってあげた。そして、その間、子供達と軽い話をする。

「自分で怒ってて泣きそうになっちゃ、格好悪いよ?」
「な、泣きそうになんてなってない!」
「そっか」

あの時の子供は泣きそうであれほど怒鳴っていたのか。てっきり怒っているからだと思っていたのだが、泣きそうなのを我慢してだとは…。

「もう頭ごなしに怒鳴っちゃ駄目アルヨ?」
「君も、ずっと泣いてないでね?」
「…おう」
「うん!」

もう傷も痛くなくなったのだろう、子供は笑顔になっている。足をびんびん動かしているし、この分なら走れそうだ。

「さて、ツナ。ここで問題がアルね」
「え?何?」
「お前等でドロ最後アル」
「……ワォ」

残っているドロは綱吉と子供の二人。ここで一斉にドロを逮捕するのがケイサツ班としてベストなのかもしれないが…。

「あ、それじゃ、俺が捕まるよ」
「え!?ツナ兄ちゃん捕まんの!?」
「やだツナ兄ちゃん!」

子供達二人はブーイングの嵐だが、綱吉は笑顔で言った。

「ここで俺含むみんなを助け出せたらヒーローだぞ?」
「「やる!!」」

子供達はあっという間に彼方へと逃げていった。それは早くも作戦をたてながらで。喧嘩していた面影は全くなく。

「ツナ…いつか詐欺師になりそうアル」
「いやいやならないよ!?」
「口が巧いアル」

そう言って、神楽は手柄を右手に抱えながら集合場所へと戻る。

「そう言えば、ツナ」
「何、神楽ちゃん」
「どうして子供の場所が分かったアルか?」
「ん?んー…」



「泣いている人の声は、聞こえるんだ」



この世界に来て、特にね。



神楽はそれを聞いて、小さく笑った。

「ツナ、やっぱり詐欺師になりそうアル」



本当にしか聞こえない。







**********

55000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『ツナの超直感について』でした。

あまり超直感って感じしませんね…。
この世界に来てツナの超直感は強くなっている設定です。
超直感については聞いているけど、そんなのがなくてもツナは泣いている子を見つけるんだろうな、とか思っている神楽ちゃん的な。

今回のリクエストは由里様でした!
なんか違う感じになってしまいすみません!
リクエストありがとうございます!


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