「最低でも三本はほしいんだよ」

第一印象は『チンピラ』だった。





「土方さん。世の中にはルールがあります」
「…分かっている」
「はい。土方さんなら分かっていると思います。だから…だから訊きたいンです」

綱吉は悲しそうな目をして、彼の正面に立ち、言った。



「何でマヨネーズが絡むと壊れるンですか!?」



場所はスーパーの近くの公園。綱吉の後ろには、新八が苦笑いをしながら立っている。
その状況は、初めて土方と会った状況と似ていた。

「まぁ、落ち着いてこれでも食え」

土方は綱吉にアイスを渡す。綱吉は「何で」と繰り返す中でもお礼を言い、アイスを受け取る。
これで、更にあの時の状況に近づいてしまった。

「何で…何で…」
「むしろ、何でお前がそんなに落ち込んでいるンだよ…」

新八と綱吉は公園のベンチに座り、貰ったアイスを食べる。
何でと呪文のように呟きながらでもアイスを食べる綱吉は、この世界に来て食い意地が出てきたのかもしれない。

「土方さんがまたあのスーパーでマヨネーズを無理矢理買おうとしてたからじゃないですか?」
「いや、それでこの様子は可笑しいだろ?」

三人は偶然にもスーパーで出会った。
特売日での買い出しと言う、いつも通りの万事屋の習慣。そして、いつも通りではない私服姿の土方のマヨネーズの買い出しに遭遇。
そこまでだったら良かったのだが…。



『何でだぁぁぁぁぁ!!』



綱吉がそれに過剰反応した。
土方がマヨネーズを買い占めているのを見るのは初めてではないのに、どうしたと言うのだろうか。
ひとまずは買うモノを買い、エコ袋に買ったモノを詰め、さながら綱吉と土方の出会いを再現するかのように公園にまで移動した今現在。
綱吉は激しく動揺し、それ以上に土方と綱吉は動揺していた。

「土方さんは格好いいのに何でそんな買い物の所で常識がないンですか普通ここで買い物の常識がないのは神楽ちゃんや沖田さん辺りで土方さんはむしろ常識人でそこは振り回されて苦労する人で俺や新八君と一緒に大変ですねそうだななんて会話がなされる展開では……」



「大変だ。綱吉君が壊れた」
「こいつは爆弾小僧と野球小僧よりもマシだと思ってたが…」

長々と独り言を呟きだした綱吉に、二人は顔を引きつらせながらも話し掛ける。

「あー、その、綱吉君?人にも、欠点があるのが普通で…」
「お、おう。俺のマヨネーズへのこだわりは欠点じゃぁ絶対ないが、人と違うことぐらい…」

刺激をしないように二人は慎重に言葉を選ぶ。
しかし、綱吉は何かのスイッチが入ってしまったようだ。

「何で…何で…」

綱吉はぐわしと土方の両肩を掴む。

「何でェェェェェ!!」
「うおぉぉぉ!?」

そして、そのまま勢いよく前後に揺さぶる。土方は攘夷志士でもない、ただの子供と判断している綱吉の壊れたとしか言えない状態にどう対処するべきか判断が出来ず、されるがままだ。

「ちょっ、えっ、綱吉君!?」

新八は驚いていた。普段の綱吉ならばこんな大胆なこと絶対にやらない。どうしたというのだ。この世界に来てストレスでも溜まっているのだろうか。

「綱吉くぅぅぅん!?」

綱吉が土方を放すまで十分掛かった。





「驚いたンです…単純に…」

((僕/俺の方が驚いた…))

落ち着いた綱吉は、土方が自販機で買ってきたオレンジジュースを両手で包み込むように持ち、肩を落として、何かを悟ったような顔でベンチに深く座っていた。周りには黒いオーラが見える気がする。

「土方さんはクールで、格好いいイメージが頭にこびり付いていて…そのイメージを持ってあの姿を見たら…何かが崩れ落ちたようで…」

ここは青空が見える外だ。なのに、何故狭い部屋で犯人の独白を聴いている気持ちがするのだろう…。

「思わず…と言った感じで…」

綱吉は更に肩を落とす。

「「……」」

土方と新八は無言で目を合わす。
まぁ、要するに。格好いいな、凄い人だな、と思っていた土方が、買い物で駄目な部分を見てしまい、何故だ!となったというのか

「「……」」

話に聞いた限り、綱吉の周りの方が何故だ!と言う事が多そうだが…。普通の人だと思っていた土方がそうだと、ショックも大きかったのだろう。この世界に来て、疲れも溜まっているのかもしれない。

「…そんな落ち込まないで、綱吉君」
「アイス、もう一本食うか?」



そんな彼を、二人は日が暮れるまで励ました。





第一印象は『チンピラ』だった。



第二印象は『格好いい』だった。



最終的には『何故に…』だった。







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52222HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『ツナと土方の絡み』でした!

うん、ツナのキャラが若干壊れた。
我が家のツナさんは、土方さんは凄いと思っています。
父親がまともに仕事しているところを見たことがないので、これが大人の仕事が出来る男、的なイメージを持っています。
それが崩れた時でしたとさ。


今回のリクエストはマロ様でした!
完全なるギャグになりました。
リクエストありがとうございました!


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