嫌な予感はしていたさ…。
だけど、あのキラキラした目を見たら、何も言えなくなるじゃないか…。

「十代目!ここです!このラーメン屋で未確認地球外生物を見たンです!」
「未確認かはともかく、地球外生物はそこら中にいるけどね」

場所は『北斗心軒』という名のラーメン屋の前。
事の始まりは、一時間前にまでさかのぼる。

『十代目!すっげぇUMAを発見したんス!』

万事屋に来た獄寺、山本、沖田の三人。
彼等は隊服姿で、明らかに仕事中だった。しかし、それを綱吉が指摘したところ、

『サボります!』

と、笑顔で言われてしまった。
堂々と言うな。しかし、彼の上司である沖田が一緒にサボっているのを見れば、強く言えない。まったく、それで良いのだろうか…。
そして、獄寺は昨日の休憩時(サボり時)に面白い天人を見たというので、是非綱吉にも見せたいらしい。

今のところ、一番綱吉が驚いた天人は万事屋の近所に住む花屋の店主だ。驚いたと言うより、恐かった。あの顔で営業なんて出来ているのだろうか。道に人っ子一人歩いていなかったが。
確かにそれを上回るインパクトがある天人なら、見てみたい気もする。

「そのUMAは白い奴で、ペンギンっぽいンですが、指が無いのに器用に箸を持って蕎麦を食ってたンス!」
「ラーメン屋なのに蕎麦?」

チャーハンや餃子なら分かるが、蕎麦を置いているとは。珍しいラーメン屋だ。

「店主の女は当たり前のようにしていましたが、あれは客な訳ありません。きっと幸運を呼ぶ招き猫のようなモノです!」
「ペンギンなのに猫なのな!」

獄寺の言葉の次に口を開いたのは山本だった。どうやら山本はその獄寺の見た天人を見るのを楽しみにしているらしい。
そして後ろから付いてきているのは…。

「ここ、俺の行きつけの店じゃねぇか」
「依頼で報酬貰った後で良かったですね。ラーメン食べられます」
「サボれるなら何処でもいいでさァ。土方にばれても獄寺のせいに出来るしな」
「働くアル税金泥棒」

万事屋と沖田も付いてきた。沖田はサボるためのようだが、何故万事屋の三人も付いてくるのか。
ちょっと気になって新八に訊いたところ、どうやらその天人に心当たりがあるらしい。

『もしいたら、沖田さんがバズーカ撃つかも…』

その場合は止めてくれる人数は多い方が良い。沖田がバズーカを発射する理由は分からないが、その場合は大変なのは確かなので、好意は有り難く受け取っておくことにした。

「いらっしゃい」

入れば、そこには女店主がいた。
お昼時ではないこともあってか、店の中には客は二、三人と少ない。
そして、獄寺が言っていた天人の姿はなかった。

「何でィ、獄寺、いねぇじゃねぇか」
「やっぱりただの馬鹿ネ」
「んだと!?」
「獄寺君落ち着いて!」

空いているテーブルに座ったのに再び立ち上がろうとする獄寺を綱吉が止める。獄寺は大人しく座り、懐に手を入れた。

「フン、いないことは想定済みだ」
「ほう。で、どうすんでィ?」
「これで誘き出す!」

獄寺は手を抜き出す!その手にはなんと生魚がまるまる一匹握られていた!

「「どうやって服に入れていた!?」」

綱吉と新八の突っ込みが綺麗にハモッた。

「ペンギンの好物は魚だ。これがあれば誘き出すのは簡単だろ」
「いや、そんなドヤ顔で言うなアル」

獄寺は構わず次々とテーブルの上に魚を並べていく。まるで魚屋のようだ。
客の一人がそれを見てそそくさと店から出て行く。正しい行動だ。もし隣でそんなことをされたら、自分だって出て行く。

「営業妨害だ」

しかし、店にとってはたまったものではない。女店主は怒りの形相で獄寺の後ろに仁王立ちした。

「本当にすみません!」

頭を下げるのはもちろん綱吉と新八。獄寺は店主にお玉で殴られた頭を押さえている。

「すんません十代目…しかし何故俺が怒られなきゃ…」
「それは怒るよ!客帰っちゃったもん!」
「う…」

獄寺は綱吉に怒られてしまい、本気で落ち込んでしまった。綱吉に罪悪感が湧いてくる。

「…まぁ、悪気がないのは分かるけど…次は気を付けてね?」
「十代目…ありがとうございます!」
「はは!仲直りなのな!」
「黙れ野球馬鹿!俺は別に十代目と喧嘩してねぇ!」

店で騒ぐ三人。これではまた営業妨害だと怒られてしまう。

「しかし…仲が良いもんでさァ」
「だな」

沖田と銀時がそう言っていると、ラーメンが運ばれてきた。

「あ?まだ何も注文してねぇぞ?普通茶だろうが」
「うちはラーメン屋だよ。茶が飲みたきゃ茶屋行きな」
「んだとこらぁ!!」
「だからダイナマイト出さないでって!」

綱吉が必死で獄寺を止め、山本がその隣で笑っている。
それがいつもの彼等だった。

「本当、仲が良いもんでさァ」
「だな」

沖田と銀時はずるずると運ばれてきたラーメンを食べた。







**********

32000HITキリ番リクエスト
銀色アサリで『獄寺が空回りする番外編』でした。

上のリクエスト内容は要約ですが、こんな感じになりました。
初期の獄寺は頑張り過ぎて逆にトラブルを巻き起こしていましたね。
今もあまり変わっていない気がしますが←


今回のリクエストはとなみ様でした!
三人は仲良しが良いですね!
リクエストありがとうございました!


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