「トマトってさ。笑うの苦手だったの?」

部屋にいるのは二人だけだった。
きゅーは台所で洗い物をしているし、ピンパーネルとルーシーは出掛けている。二人とも夕飯までには帰ると言っていた。だが、今はまだ太陽が夕日に変化するか否か、という時間帯だ。帰りはまだ数時間は先だろう。

最初にそう思ったのは、ジェードリに向かう馬車の中だったと思う。
その後は思い出したくもない騒動に巻き込まれたり、昼飯時(ランチタイム)の人達を救出したりで考える暇もなかったけど。ふと、折に触れて思うことがあった。

「ん?」

トマトクンはソファに座って食後の茶を飲んでいる。
トマトクンは今昼飯を食べ終わった所だ。マリアローズやピンパーネル達は昼にすでに済ませてしまっている。その時トマトクンも一緒に食べようかとも思ったのだか、その時は起きなかったのだ。だから夕暮れ時の今、昼飯を食べたのだが、夕飯はどうするのだろう。夕飯も食べるのかな。

「どうしてそう思うんだ?」

トマトクンは眠そうだが、両目は案外しっかりと開いている。最近では話している最中に寝てしまうことがある彼だ。今日は調子が良いのだろうか。昼は起きなかったけど。

「いや。何となく、さ」

マリアローズはオレンジジュースを一口飲んだ。
……緊張してる?何で?訊かなければ良かった?訊かなくても良い質問だった。トマトは昔の事を話題に上げると、困る事が多いから。

やっぱ、何でもない。そういう前に、トマトが口を開いた。

「そうだな」

トマトは腕組みをした。昔の事を思い出しているのかもしれない。

「笑っている感じはしなかったな。少なくとも、今と同じ笑い方じゃなかったと思うぞ」

トマトはうんうん、と頷いた。何に頷いてるんだろう。

「そっか」

マリアローズはトマトクンと同じ様に頷く。

「ヒヒヒ」

トマトはいつも通り、似合わない下卑た笑い声を上げた。ガキ大将みたいだ。

「この笑い方は嫌いか?」
「ううん」

自分でも驚くくらいの返答速度だった。

「ううん」

もう一度、否定する。
ヒヒヒ、とトマトクンは再び笑った。
たぶん、マリアローズも笑ってた。





**********

テンションって恐ろしい。一気に書き上げました。

笑うの苦手だったんじゃ〜ってのは五巻でのセリフです。読み返していたら、なんか、うん。印象深いセリフでした。

マイナーに位置するって、分かってるんです…。でも、好きなんです、薔薇のマリア。
巻が増して、登場人物も増えて。マリアローズが成長すると、面白くなっていきます。イラってするときも多いけど。

たまに短文書くかも、です。



20120401



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