「恋次。俺は旅に出る」
「は!?朝早くいきなり来たと思ったらどうしたんすか!?」
「良いか。俺が旅立った事は誰にも言うなよ」
「え、話が見えないンすけど……一角さん、何かあったンすか?」
「恋次。今日は何日だ」
「今日は四月一日……あ」
「やっと気付いたか」
「魔の三大行事……ですか?」
「それ以外何がある」
「ちょっ、待って下さいって!今までの行事は沢田四席が何してもどうにか乗り切ったじゃないッスか!何で今回は逃亡一択!?」
「クリスマス。彼奴は副隊長には甘く出来るくらいには余裕がある」
「あ〜…ですね」
「雛祭り。禁句を避けて、近付かなければ被害は受けない。ギリセーフだ」
「その時点でアウトゾーンだと思うンすけど……」
「そして四月一日。エイプリルフール。彼奴は……」
「沢田四席は?」
「開き直る」
「…………え?」
「恋次。最初、お前は今日非番の予定だったよな」
「は、はい」
「でも、それを代わって欲しいと乞われて、今日勤務になった」
「そうッス。何かその日用事があるらしくて……まさか……!」
「お前の想像通りだ。十中八九、そいつは用事じゃない。彼奴の魔の手から逃れるためだな」
「そ、そんな……」
「今日の勤務は何も知らない新人ばかりだろうな。知っている奴なんて真っ青になってるだろうぜ」
「ひ、酷い……!」
「で、俺は頑張ったが非番を取れなかった」
「だから旅に出る……ッスか?」
「隊舎に居たらどうなるか分かったもんじゃない。明日には帰ってくる」
「ど、何処に行くんすか?てか俺も一緒に……」
「駄目だ!何人もいなくなったら彼奴が捜索するかもしんねぇだろうが!彼奴の捜索スキルの馬鹿みたいな高さ知ってンだろ!」
「だからって自分だけ逃げないで下さいよ!」
「うっせえ!彼奴に捕まらないためなら俺は……」
「彼奴って誰かなぁ、一角くぅん」
「恋次!散開!」
「はい!」
ポン
「さぁ、仕事の時間だよ」
四月一日。
その日は、十一番隊が一年で最も緊張が走る日。
十一番隊の隊士がどんな目に合うか、誰も語らない。
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彼は一日どんな嘘をつくでしょう。嘘だと思ったら真実で、真実だと思ったら……。
魔の三大行事。是にて閉幕。
20120401
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