第五章 第十一話     87/115
 




ドォン



破壊音で目を覚ました。気持ちがよい目覚めとはいかない様だ。

「頭痛いし……」

背中も痛い。それでものんびり出来る状況ではないのは分かっている。

「此処…何処だろう」

綱吉はゆっくりと体を起こす。其処は知らない部屋だった。
部屋から見える外には空がない。此処はまだ吉原だと言うことは分かる。しかし、周りには誰もいない。銀時達も、晴太も、あの男達も。
もしかして――。

「……俺、また捕まった?」

縛られていない。見張りもいる気配はない。だけどこの状況。決して前向きには考えられない。
真選組での伊東の反乱の時にも捕まって、またか。この世界に来て自分の運気は何処かに逃げ去ったらしい。

「縛られていないのが幸いかな…」

無理矢理にでもポジティブに考えよう。此処に連れてきた者の目的は分からないが、大人しくしている道理はない。
身体の彼方此方を触ってみる。叩き付けられた所や背中は痛いが、動けないほどではない。痣になっているかもしれないが、そのくらいで済んでいるのなら問題ないだろう。

「痛くとも、行かないわけにはいかないし」

嫌な予感がする。ずっと感じていた予感。それが強くなっていっている。

「晴太君……」

連れて行かれようとしていた晴太は無事だろうか。捜さなくては。きっと銀時達も晴太を助けにやってくる。自分だけが此処で休んでいるわけにはいかない。

襖を音が立たない様に開け、少し顔を出してみる。廊下には誰もいない。足音も聞こえない。代わりに聞こえるのは――。



ズドォォォン



破壊音。床が揺れるほどの衝撃だ。この屋敷で何か起こっているのは間違いない。ますます晴太が心配だ。

「……よし」

ポケットに入れている手袋と死ぬ気丸を確かめる。これを飲むのは最後まで考えなければ。死ぬ気になったその後、自分は気を失ってしまうのだから。



『俺達は、この世界から拒絶されている存在だ』



思い起こされるのは、プリーモからの手紙に書かれていた言葉。
死ぬ気の炎は、この世界からの拒絶を加速させる。
この世界に、あとどれほどいられるかは分からない。
帰る術が、異世界転送装置が何時手に入るか分からない。

それでも。それでも。



『見付けろ。自力で』



晋助さん。俺の答えは決まっていました。



「護りたいんだ」



この世界から拒絶されているとしても。
大切な人が出来た。護りたい人が出来た。
なら、俺は護る。
たとえ世界が受け入れなくても。
あの人達がいてくれるから。



綱吉は手袋を強く握り締めた。
その瞳に、迷いはない。






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