第五章 第八話 84/115
バッドタイミング。いや、助けが来たのは心から嬉しいのですが。だが、不味い。非常に不味い。
狙われている晴太が此処に来るのは、不味い。
――見付けた。
男達の一人の口が、そう動くのを綱吉ははっきりと見た。布で顔を隠している青年の攻撃を避けながらだったことを考えると、それは偶然でしかないが、一人の口が動いたことは確かだ。
髭を生やした男が動くのと、綱吉が叫ぶのは同時だった。
「銀さん!」
銀時はその叫びにいち早く反応し、晴太と男の間に立ちはだかる。
「その傘…夜兎族か!?」
銀時は腰に差している木刀を抜き、髭を生やした男と対峙して走る。
男と銀時が衝突しようとしたとき、しかし、男は銀時を飛び越える。男は銀時を相手にする気はない。
男の目標は――。
「晴太!」
男は一直線に晴太に向かう。しかし、今度は月詠が次々とクナイを男に投げつける。男は傘を開いてそれを防ぎ、晴太に迫っていくが、月詠が飛び上がり、男の後ろ、傘の死角からクナイを浴びせる。
しかし――。
「なっ!」
男は月詠が投げたクナイを歯で受け止めていた。男はクナイを口に銜えたままニヤリと笑う。
男は片手で月詠の頭を掴み、地面に容赦なく叩き付けた。
「月詠さんんん!」
男は銜えていたクナイを左手に持ち、月詠に突き刺そうとするが、月詠は頭を押さえ付けられながらも左手のクナイでそれを防ぐ。
「早く!!今の内に逃げろ!!」
月詠は男の顎を蹴り上げながら叫ぶ。
「くっ!」
新八は咄嗟に晴太の手を掴もうとするが、二人の間に激しい銃弾が次々と撃ち込まれる。
「なっ!」
銃弾を撃ち込んでいる上空を見れば、其処には頭の天辺で髪を結っている男が。髭を生やしている男が飛び出すとほぼ同時に彼も走り出していたのだ。
「くそっ!」
銀時は再び晴太の前に立ち塞がろうとするが、傘の一撃で吹き飛ばされる。
「がはっ!」
吹き飛ばされた銀時を神楽は受け止める。銀時は咳き込みながらも腹を押さえながら膝を突いて立ち上がろうとする。
「夜兎が、二人!!」
髪を結っている男は晴太の服を掴み上げ、そのまま連れて行こうとする。
「放せっ!!」
晴太はじたばたと暴れるが、そんな抵抗が歴戦の夜兎に通じるわけがない。
「晴太ァァァ!!」
神楽は男に飛びかかる。晴太を助けなければ。思いはそれだけだった。
だから――。
「神楽ちゃん!」
綱吉の緊迫した声で止まることは出来ず――。
「邪魔だ。どいてくれよ」
その言葉を聞いて、振り返り――。
「言ったはずだ」
その姿を見ても――。
「弱い奴に用はないって」
「……にっ……」
避けることは出来なかった。
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