第五章 第四話     80/115
 




太陽が見えないが、数多くある光源により明るい吉原。その街の裏道を綱吉は走っていた。逃げるために。
隣に今、銀時はいない。二手に別れて逃げようと言うことになったのだ。
追っ手は撒いたのか、追われている気配は遠ざかったが、街の騒ぎが静まった様子はない。まだ侵入者である銀時や綱吉を捜しているのだろう。

「晴太君達と合流しないと……」

綱吉は裏道を駆使して追っ手からの目をかいくぐる。このままでいけば問題なく晴太達と合流できそうだ。
しかし、そうはいかなかった。

次々と裏道を曲がっていたら、その先から話し声がした。

「しかし、そのガキってのは何処にいるんだか」
「其処は阿伏兎が捜してよ」
「アンタも働け、このすっとこどっこい」

綱吉は反射的に隠れる。潜みながら移動している身としては、見付かるわけにはいかなかった。
しかし、子供だと?
子供は世の中にはたくさんいる。綱吉自身も子供に分類される。しかし、ここ吉原で子供を捜すとなると、綱吉は一人しか思い浮かばなかった。

(晴太君を捜している……?)

これは他人事ではない。綱吉は隠れたまま盗み聞きをした。

「人捜しは得意じゃないんだよね。阿伏兎はこういう雑務よくやってんじゃん」
「アンタがまともにやらないからだろ!」
「団長は戦闘しか頭にないからな」
「別に良いだろ、云業。それでも第七師団は回っているんだから」

彼等は何者だろうか。
先ほど一瞬見た限りではよく分からなかった。三人とも同色のマントを羽織っていたのは見えたし、話しぶりからしても仲間なのは間違いないだろうが、晴太に何の用があるのだろうか。良い予感はしない。

「鳳仙との約束の時間には間に合わせないとな」
「旦那は少しくらい遅れても文句言わないと思うけどね」
「そう言う問題じゃねぇんだよ」

鳳仙……確か晴太から聞いたことがある。この吉原を治める、絶対君主の名だ。
彼等は鳳仙の関係者なのだろうか?そんな者達が何故晴太を捜す?
綱吉はもっとよく話を聞こうと少し身体をずらした。
それが合図になったのかもしれない。

「……で、だ」

男の一人が言う。

「さっきから、其処で盗み聞きしてんのは誰だ?」

綱吉は背筋が凍った気がした。
身を翻し、その場から離れようとする。しかし、もう遅かった。



とんっ



前に、男が降り立った。

「あれ?子供?」

顔に布を巻いた、声から判断するに青年だ。手にも包帯を巻いており、マントを羽織っていることもあって肌の露出は少ない。赤橙色の髪を三つ編みにしており、ふと、この世界で共に暮らしている少女を思い出す。
そして、布の間から覗く瞳で、彼は綱吉を見ている。

「もしかして、コレが捜している子?阿伏兎?」
「あー、たぶん違うぜ、団長。捜しているガキは八つのはずだ。ただ……」

後ろにも近づいてきている声と気配。その声は先ほどまで盗み聞きをしていた男達の声だ。綱吉が隠れていたのに、男達は気付いていたのだ。
前には布を顔に巻いた男。後ろには、髭を生やした男と、頭のてっぺんで髪を結っている男。此処は細い路地裏だ。逃げ道はない。囲まれてしまった。

「ガキ繋がりで、何か知ってっかもしれないがな」

後ろの男が笑った気がした。






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