第五章 第二話     78/115
 




晴太がお登勢の所で働き始めて数日が経った。

「えー、銀さんマ○オ派かよ。男は黙ってゼ○ダだろ!」
「何言ってんのよ。あのおっさんは俺がガキの頃からおっさんなんだぞ。すげぇおっさんなんだぞ」
「私はポ○モン派ネ。リザ○ドンのれべる100まで上げたのは良い思い出アル」
「あー、何か今は個体値やらなんやらがある奴か。もっと純粋に楽しもうぜ!」
「僕が寺子屋に通っていた時の友達は、廃人の様にビ○ティニを狩っていましたよ」
「私が初めてやったのは緑だったアル。カ○リューをミ○リューから育てるのは大変だったネ」
「何この伏せ字祭り!?」

晴太とも随分と打ち解けている。もうすっかりと万事屋やスナックお登勢の一員だ。

「ツナはゲーム何派アルか?」
「え?音ゲーかなぁ?」
「ツナが……」
「……音ゲー…」
「……え?何?この微妙な沈黙」
「ツナ兄リズム感なさそうだよ」
「酷い晴太君!?え?っていうかみんなそう思ってるの?」

休憩時間の会話である。今日は万事屋の面々も家賃を待って貰うためにお手伝いだ。

「これでも対戦じゃそうそう負けないんですよ?」
「ほう。因みに相手は?」
「……五歳児ですけど」
「ツナ…お前にもプライドってもんがあるだろう…」
「ガキ相手に本気になるのは大人気ないアルヨ、ツナ」
「うう…何でこんな惨めな気持ちになるんだろう…」

店内の一つの机を囲んでの団欒は意外と盛り上がる。年の差はあっても精神年齢は近いのかもしれない。主に銀時が。

「ほらガキ共。林檎を剥いたよ」

お登勢が皿にこんもりと盛った林檎を差し入れしてくれ、皆の顔が綻ぶ。

「それを食べたら皿洗って、店の掃除をしておくれ」
「はーい」
「返事は伸ばさない」
「はい!」

晴太は元気に返事をし直し、綱吉達もお礼を言ってから林檎に手を伸ばす。

「晴太君、林檎落とさない様にね」
「分かってるよ、ツナ兄」
「そうやってると本当に兄妹みたいだな」

銀時は林檎を口に含みながら言う。

「へへっ。ツナ兄は兄弟いるの?」
「一緒に暮らしている子供ならいるなぁ。晴太君くらいの子供もいるよ。フゥ太っていうんだ」
「どんな子?」
「んー、ランキングフゥ太って呼ばれてて、ランキングを作らせたら百発百中の子供なんだ」
「ツナの周りには本当に面白い奴がいるアルナ」
「俺もパチンコの出る台を占って欲しいぜ」
「オイラも会ってみたい!ツナ兄の実家にいるんだろ?ツナ兄って実家何処?」

一瞬空気が固まった気配がした。
実家。それはこの世界ではなく異世界だと言っても良い物か。いや駄目だろう。神楽などははっきりとしまったと顔に書いてあるし、新八も目線を外した。

「遠い……とても遠い所なんだ」
「そうなのか?」
「うん。フゥ太に会うのは……ちょっと難しいかな」
「ちぇ。残念だ」

話していれば、五人で食べていた林檎はあっという間になくなる。綱吉は開いた皿を持って立ち上がった。

「さ、店の手伝いしないと」
「皿洗いオイラも手伝うよ!」
「私もやるネ」
「それじゃ銀さんは表に出てようか……」
「おいこら天パ。逃げる気じゃねぇだろうな」
「ギクリ。新八君。人を信じる心は大切だと銀さんは思うんだ」
「てめえには前科があるだろうが!ちょっと、子供の晴太君が真面目に働いてるんだから、銀さんもちゃんとやって下さい!」

銀時は新八にモップを持たされ、しぶしぶといった体で店内の床掃除を始めた。新八も布巾を持ってテーブルの上を拭いていく。
それを見て、綱吉達も皿洗いに取り掛かった。まだ慣れていないので、一枚ずつ丁寧に洗っていく。その間も先ほどの会話は続いた。

「オイラみたいな子供と一緒だったんだろ?だからツナ兄は兄ちゃんみたいなのか?」
「兄ちゃんって…そう思われてるかは微妙かなぁ…」

綱吉はそれに苦笑で返す。
イーピンやフゥ太は慕ってくれている節があるが、ランボはどうだろうか。嘗められているとしか思えない言動をされている。慕っていてくれていたら嬉しいが、その望みは薄いだろう。

「神楽ちゃんは兄妹いるの?」

隣で洗った皿を拭いている神楽に訪ねる。しかし、返答はない。不自然に思い彼女を見れば、神楽は不機嫌そうに口をへの字にしている。

「……神楽ちゃん?」
「……一人、いるアル」

神楽はその顔の通り、不機嫌そうな顔をして言う。

「兄貴がいるネ」
「お兄さん?」
「もうこの話は終わりアル!皿洗うネ!」

神楽は無理矢理話を切ってしまう。

「うん……」

お兄さんの事が嫌いなのだろうか。綱吉は神楽の言うとおりにそれ以上は訊かなかった。

胸に、一欠片の引っ掛かりが残った。






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