第四章 第二十三話 72/115
綱吉は寝室に敷かれている布団の上に座り込んだ。
「渡しちゃった…」
銀時にはああ言ったが、手紙の中身はとても気になる。中身を見てしまおうかという思いもあったほどだ。
だが、どうするかは決まっている。渡すしかないじゃないか。
プリーモはどうして自分が銀時に出会うと分かっていたのだろう。超直感だからだろうか。
なんでも良かった。
銀時は喜んでくれただろうか。喜んでくれたら、いいな。
綱吉の銀時への手紙の想いはそれに尽きる。あの手紙が、銀時へどの様な影響を与えるのか。喜びだったらいい。
「……」
布団に横になり、綱吉は自分宛だった手紙を空に透かす様に掲げる。
ただの手紙だ。だが、綱吉にはそれ以上の意味を持っていた。
内容はもう分かっている。もうすでに読んだ。
「プリーモも…酷いなぁ…」
そこには、真実しか書かれていなかった。
『他の世界にいるはずの俺達は、時間軸と時間そのものを超えて来ている、全く別の世界の者だ』
「なんで…」
『俺達は、この世界から見れば異分子以外の何物ではない』
「なんで…」
『俺達は、この世界から拒絶されている存在だ』
「なんで…!」
『この世界にいられる時間は、限られている』
「どうしてだよ…!」
まだ、この世界への想いは消えないのに!
銀時が好きだ。神楽も好きだ。新八も好きだ。真選組の人も、お妙さんも、お登勢さん達も好きだ。高杉とはまだ何かある気がする。
まだ、この世界には未練があるのだ。
手紙には、残っている時間の詳しくは書かれていなかった。個人差があるらしい。
そして、その時間を縮めるのは死ぬ気の炎だ。
綱吉が死ぬ気モードになって倒れていたのは、世界からの拒絶が強く働いたかららしい。綱吉の大きな、純粋な死ぬ気の炎が、仇になっていたのだ。
以前の熱も、風邪などではなかった。この世界からの拒絶が、熱という形で現れていたらしい。
あの時は元の世界の物であるボンゴレリングの力で回復出来たが、またリングが作用するか分からない。
「……仕方ない、事なんだよな」
そう、仕方ないことなのだ。どうしようもないのだ。
死ぬ気の炎を使うとき、その後どうなるのか分かっていても、迷わなかった。このような場合も考えていなければいけないのだ。
仕方ない、事なのだ。
「…うっ…くっ…」
でも、割り切れるほど綱吉は大人にはなれなかった。
この世界に拒絶されているのがただ悲しかった。
それは、まるで彼等に拒絶されている様に感じて。
「どうして…なんだよ…!」
一人で、声を殺して泣いた。
泣いて、泣いて。
気付いたら、綱吉は眠っていた。
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