第四章 第二十一話     70/115
 



万事屋に帰れば、みんなが迎えてくれた。

「ツナ!どうだったアルか!?」
「うん。松平さんには会えたよ」

一番に駆け付けてくれたのは神楽だった。玄関まで迎えに来たその顔には心配していたとありありと現れており、別に人に会いに行っただけなのに大袈裟だな、と綱吉は思った。

「本当アルか!?手掛かりはあったアルか!?」
「うん。大丈夫だから、落ち着いて」

万事屋の奥に入れば台所から良い匂いが漂ってくる。新八が割烹着姿で顔を出した。

「おかえり、綱吉君」
「ただいま、新八君」

銀時は先ほどまで、ジャンプを読んでいたのだろう、隣に置いて此方を向いた。

「おう。どうだった?」
「はい。いろいろな話を聞けました」

その日は、何事もなかったかの様にご飯を食べた。
神楽が何か訊きたそうにそわそわとしていたが、綱吉は何も言わなかった。

最初は、二人だけで話したかった。





その夜。新八は帰り、神楽は押入で眠りに付いた頃。
銀時は酒を飲んでいた。一人酒だったが、そうはならなかった。

がらっ

戸が開き、綱吉が隣の部屋から出て来る。

「銀さん」
「おう。どうしたんだ」

綱吉は、銀時に話があった。

「大方、今日の松平とかいう奴の話関係だろうが…俺はその松平って奴知らないぞ?」

綱吉が銀時に何かを言いたそうにしていたのは、態度を見て分かっていた。しかし、何も言わなかったところを見ると、周りに人がいない方が良かったのだろう。夜に神楽が寝静まるのを待っていた。
しかし、タイミングから見て今日の話関係だろうが、銀時には綱吉が何を言いたいのかは分からなかった。

「松平さんに関係すると言えばそうですが…」

綱吉は銀時の前のソファに座った。

「銀さんに関係するって言った方が良いと思います」
「…どういう事だ?」

綱吉は、机に置いた。

「…これは?」
「手紙です」

それは、一通の古い手紙。

「プリーモから、銀さんに」

銀時は目を見開いた。それは、初めて手紙を見た綱吉と同じ反応だった。

「…何…で…」
「俺や獄寺君や山本宛てにも、手紙がありました。松平さんに、プリーモが預けていたらしいです。…帰る前に」

何処に、とは言わなかった。言われなくとも、分かる。
元の世界に帰る前に、プリーモは手紙を託したのだ。言葉を残したかった者に。
銀時は、置かれた手紙を手に取る。

「最初は一つの封筒に入っていて、その中に個別に入っていました。…銀さん宛にあったのは、俺しか知りません」

咄嗟に隠した。どうして皆に秘密にしたのかは分からない。本当に何も考えず、咄嗟の行動だったのだ。

「…みんなに、その手紙のことを言うのかは銀さんが決めて下さい」

銀時は手紙を見詰めたまま呆然としている。全く予想打にしていない話だった。
まさか、自分宛に手紙だとは思っていなかった。それも、ジョットから。

「…俺、もう寝ます」

綱吉は立ち上がり、寝室への戸を開ける。銀時は、まだ座っていた。

「銀さん」
「…何だ?」

銀時はそれだけ言った。

「俺は、その手紙の内容は聞きません。他の人の手紙の内容って、聞き出すような物じゃないでしょ?」

綱吉は振り返った。銀時は、言葉を紡ぐ綱吉を見詰める。

「その手紙は、銀さん宛です」

綱吉はもう一つの手紙を出す。

「これは、俺等宛です。雨、嵐、大空のシンボルがありました。でも、名前は書いていません。この手紙は、《この世界に来た者》宛なんだと思います」

綱吉は笑顔になった。

「でも、その手紙は《銀さん》宛です。銀さん、ただ一人に宛てた手紙です」

笑顔が、深くなる。

「読んで下さい。それは、プリーモから、銀さんに宛てた言葉です」

おやすみなさい。最後にそう言って、綱吉は寝室へと消えた。






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