第四章 第二十話     69/115
 




「松平さんは…」

松平と対面し、綱吉が初めてまともに口を開いた。

「プリーモ…ジョットや初代守護者に会ったんですね」
「おう。酒を飲み交わした仲だ」

昔を思い出しているのだろう。松平はふう、と煙草の煙を吐いた。

「気の良い奴等だったぞ」
「そうですか…」
「お前等とも酒を飲んでみたいもんだ」
「未成年です!」

警視庁長官ともあろう者が、明らかに子供だと分かる者に酒を勧めるな!
綱吉は叫びたかったが、自重した。今はそんなことを言い合っている場合ではない。

「お前はツッコミ属性か」
「属性ってなんですか!普通に未成年に酒を勧めないで下さい!」

自重できなかった。

「いいじゃねぇか、酒くらい。真面目な奴だな」

松平は薄く笑いながら煙草を吸う。それはそれまで感じていた威圧感とは違い、軽い感じだった。

「しかし、どんな奴なのかと思っていたら、想像していたよりも普通の奴だな」
「…どんなのを想像していたんですか」
「あ?そりゃ、もっと破天荒な奴をだな…」

松平は楽しそうだ。
獄寺は松平の話が変わらず興味深そうだし、山本もにこにこと笑っている。

「まぁ、彼奴等の話は追々語るとして…」

松平は懐を探った。何だろうか?松平が取り出す物を見ていると…。



拳銃だった。



「うわぁぁぁぁぁ!」
「てめえ!何のつもりだ!」
「あっ、間違えた」

思わず腰を上げた綱吉達だったが、松平は、何でもない風に拳銃を再び仕舞う。

「何で間違えるんですか!?」
「だっててめえ等固くってよぉ。おじさんがその緊張を解してやろうって優しさだよ」
「拳銃じゃ解れないのな…」
「ヤバイ…心臓ばくばくいってる…」

いきなり目の前で拳銃を出されたら解れるものも解れない。
元の世界では家庭教師の赤ん坊も持っているが、『いかにも』な雰囲気を持つ松平が拳銃を構えるのとでは迫力が違う。

「もっと空気を読めよ!間違えて拳銃出す様な空気じゃなかっただろ!」
「あん?何だと?てめえだって空気を読まなそうな面してんじゃねぇか!」
「てめえが俺の何を知っているんだよ!」
「お前は絶対に空気読まない奴だね!このKYが!」
「てめえに言われたくねぇよ!」
「獄寺君落ち着いて!話が進まない!」

ああ、先ほどまでシリアスの空気だったのにどうしてこうなるのか…。
山本は彼等のやり取りが面白かったのか、口を開けて大笑いしているし。頼むから一緒に止めてくれ!

「確かに緊張は解れたかな…」

これが松平の狙いだったとは思いたくないが、彼が言った様にもう綱吉達は緊張していない。

「それで…何を取り出そうとしたんですか?」

綱吉は話を戻そうと話題を振る。綱吉がそう言えば獄寺は元の位置に座り直すし、松平も前を向いた。

「おう。やっぱてめえは真面目だな」

周りが大変なので、とは言わない。
松平は再び懐に手を入れる。今度取り出したのは拳銃ではなかった。

「預かり物だ」

それは、一通の手紙だった。

「ジョットからな」

元は白かったその手紙は、色褪せて年期を感じさせる物となっている。それもそうだ。松平の話を信じるのならば、その手紙は二十年ほど前の物。色褪せていて当然だ。
そして、綱吉達は松平の話を信じている。

「プリーモから…」

綱吉はそれを受け取った。受け取ると分かる。その封筒は分厚かった。

「中は見てねぇぞ。そんな野暮はしねぇよ」

松平はそう言って顔を掻く。
綱吉はその場ですぐに封を切った。丁寧に、中の手紙を破かない様に。

「あっ、また封筒…」

横から獄寺と山本が綱吉の手元を覗いてくるのが分かる。
封筒の中には、更に幾つかの封筒が入っていた。

「雨のシンボル」

これは守護者のシンボルの事だろう。山本に渡した。

「嵐のシンボル」

シンボルはボンゴレリングに刻まれているのに酷似しているので分かりやすい。獄寺に渡した。

「これは…俺かな」

ボンゴレのシンボル。恐らく、これは綱吉宛だ。

しかし、入っていた封筒はそれだけではなかった。
残った封筒の宛先。
それを見て、綱吉は目を見開いた。






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