第四章 第十七話     65/115
 




『だから、ここまで来たら居たらいいだろうが』

『そうだぞ、高杉。何を恥ずかしがる必要がある』

『うるせぇ!俺は帰る!放せ!』

『良いのか?放して。放せば、お前が此処に止まる理由がなくなるぞ?』

『なくなっていいんだよ!』

『そう言うな、高杉。ジョット殿に捕まっていれば、捕まっていて逃げられないと、自分に言い訳が出来るぞ?』

『そんな言い訳いるか!』

『うるさい…』

『あっ、銀時が起きる』

『!!』

『あっ!逃げた!』

『逃げ足が早いな』

『何やってんだ…ヅラ』

『何って、見舞いだ。一名逃げたが』

『逃げた?誰が』

『恥ずかしがり屋のツンデレ小僧だ。林檎食べるか?』

『食う』

『それじゃ、剥いて食べよう』

遠くには逃げていない、あの少年も誘ってな。





「ボンゴレリングが?」

リングから炎が出て、綱吉の体調が好転してから数時間後。もう夜中だというのに、万事屋には灯りが灯っていた。
綱吉は遅めの夕食であるお粥を食べながら、その時の様子を聞いている。それは不思議な話だった。

「何でボンゴレリングのお陰で風邪が治るんだろ」
「ただの風邪じゃなかったんじゃないですかィ?」
「そんなまさかぁ」

夜中でも、真選組の彼等はまだ帰っていない。あのようなことがあった後だ。綱吉が目を覚ますまで待っていたのだ。

「不思議な話ですね…」
「ツナ、もう体調はいいんだろ?」
「うん。すっかりとまではいかないけど、もう平気」
「死ぬ気の炎って、風邪治せるアルか?」
「そんな話、聞いたこと無いけど…」

首を捻って考えても、答えは出ない。分からないことは多い。

「何にせよ、小僧が元気になったのなら、とっつぁんに会うことが出来まさぁ」
「とっつぁんって…誰ですか?」
「松平のことですよ、十代目。出張から帰ったらしいです」
「本当!?」
「ツナが元気になったのなら、会おうと思えば会えんじゃね?」

ボンゴレのことを知っていた松平と会うことが出来る。それは、帰るための手掛かりになるかもしれない。

「それって何時!?」
「何時かまでは…ですが、十代目が望むのならすぐにでも!」
「あっ、いや、すぐにって訳じゃないよ!」

綱吉は慌てて否定する。また獄寺が無茶をしたら大変だ。ダイナマイトを出されるようなことになれば、後に困ることになる。

「でも、やっと…やっと会えるんだ」
「十代目…」
「ツナ…」
「手掛かりに…なるかな?」

綱吉は、不安げに呟いた。
何故知っているのかは、会うまでは分からない。もしかしたら、帰るための手掛かりにならないかもしれない。

「だ、大丈夫アル!」

しかし、その不安を打ち消すように神楽は言う。

「分からなくても、また捜せばいいアル!心配いらないアル!」
「神楽ちゃん…」
「神楽の言うとおりだな。今から心配しても仕方がないだろ」

銀時は、ぽんと綱吉の頭に手を置いた。

「そんな顔すんな」
「そうです、十代目!きっと大丈夫です!」
「何とかなるモンなのな!」
「まぁ、何かしらは分かるだろィ」

口々に言われる言葉に、綱吉は胸が軽くなっていくのを感じる。そうだ、悩んでいても仕方がない。

「はい!」

そばにいる人達の言葉に、綱吉は救われている。






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