第四章 第十六話     64/115
 




「ツナ?大丈夫アルかぁ?」
「寝てんだからそっとしといてやれよ」
「そっとしてるアルヨ!でも、全然熱下がらないアル…」

神楽は心配そうに綱吉の顔をじっと見る。朝の綱吉よりも、今の綱吉の方が辛そうだ。しかし、神楽が出来ることは微々たるものである。それが悔しかった。

「何かできることは無いアルか?」
「静かにしててやれ」

神楽はその言葉にむくれる。それ以外に出来ることを訊いているのだ。銀時は綱吉が心配ではないのだろうか。
しかし、そうではないのは分かっている。これが大人の余裕という奴か。自分も大人になれば、今のようにあたふたしないのだろうか。
子供だと言われようが、神楽は何かしていないと落ち着かなかった。部屋を見渡し、何か出来ることはないかと捜す。濡れタオルは先ほど変えたばかり。冷たい飲み物は用意している。何かやることは…。

ピンポーン

考えていれば、チャイムが鳴った。反射的に神楽は立ち上がり、部屋をそっと出る。
もう日が落ちている様な時間に来客とは珍しい。依頼人だろうか?だとしても、こんな時に誰だ。

「誰アルかぁ。今うちは取り込んで…って、何だ。お前等アルか」
「何だとは何だ」
「よっ。ツナはどうだ?」

玄関の扉を開ければ、そこにいたのは獄寺、山本、沖田の三人。そう言えば、綱吉が風邪だと連絡をした。彼等、特に獄寺の性格を考えれば、むしろ今まで来なかったのが可笑しかったのだろう。
神楽は扉を開けたまま下がり、彼等を招き入れる。

「熱が下がらないアル。今は薬を飲んで寝てるネ」
「十代目…」
「お邪魔しまぁす」
「差し入れはプリンだぜィ」

綱吉が寝ていると言ったためか、彼等は小声だった。大きな声で言えば問答無用で叩き出したが、気遣っているので良いとしよう。

「ボンゴレリングは何か熱いし…十代目の熱は下がらないし…」
「折角とっつぁんさんとも会えそうなのにな…」
「まぁ、風邪じゃ仕方ないだろィ」

万事屋に入り、綱吉の寝ている部屋の襖を開ければ、銀時がそこで変わらずジャンプを読みながら待機している。彼は顔を上げて来客を見た。

「何だ、お前等か」
「何だって…どいつもこいつも…」
「おっ、ツナ」

綱吉は寝ている。此方も変わらず辛そうだ。

「寝てるのな…」
「起こすなよ山本」

そう言って部屋に入る二人。



二人は何もしていない。部屋に入っただけだ。



しかし、それは起きた。



ボウッ



ボンゴレリングが燃え上がった。唐突に。
獄寺は赤く。山本は青く。それは迷うまでもない。死ぬ気の炎だ。

「え?」
「なっ」

銀時達は勿論、獄寺も山本も何が起こっているのか分からない。しかし、それは。その炎は。そのまま放射された。
綱吉に向かって。

「ツナ!」「十代目!」

その炎は、綱吉に向かった。しかし、綱吉が燃え上がることはなかった。炎はそのまま綱吉に吸収される。

「…は?」
「何が…起こった?」
「今、ツナ…え?」

神楽が何かに気付いたように獄寺達の隣を通り、部屋に入って綱吉の隣に座った。そしてタオルを退けて、綱吉の額に手を置く。

「熱…下がってるアル…」
「…え?」
「顔色も…良いネ」
「…マジで?」

ボンゴレリングは、もう熱くなかった。
何が起こったのか、誰にも分からない。






前へ 次へ

戻る

 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -