第四章 第十四話     62/115
 




『大丈夫か?銀時』

『…何でてめえが…此処にいんだよ』

『松陽から頼まれた。薬を貰いに行っている間、看病を頼むと』

『…別にいらねぇよ』

『まぁ、いいではないか。風邪では何かと不自由だろう。何でも言え』

『…饅頭が食べたい』

『元気になったらな』

『何でもって…言ったじゃないか』

『喉に詰まったら大変だろ。せめて熱が下がったらだな』

『…下がるのかな』

『風邪になるとそう思うよな。だが、大丈夫だ。銀時のはただの風邪だ。薬を飲んで寝れば、すぐに良くなる』

『…分かってんだよ…分かってるけど…』

『大丈夫だ。松陽も、俺もいる。心配せず、眠れ。それに…』

『それに?』

『ふふ…いるのは、俺や松陽だけではないぞ?』

障子の向こうで、誰かがびくりと動いた気がした。





目を開けると、そこには銀時と神楽がいた。

「あっ、銀ちゃん。ツナが起きたアル」
「んじゃ、お粥温めるか」
「私がやるアル!」

神楽は元気に部屋を出て行く。残っているのは、銀時と、寝ている綱吉だ。
銀時は近づいて、温くなっている濡れタオルを退けて、代わりに自分の右手を綱吉の額に当てた。

「やっぱ熱上がってるな。食えるか?」
「……」
「ツナ?」

綱吉はぼーとする頭で言った。

「寝たら小さな銀さんで、起きたら大きな銀さんです…」
「…は?」

銀時はタオルを再び濡らしながら、綱吉の言葉の意味を考える。額に冷たい濡れタオルを乗せる頃には、意味も分かった。

「何だ。またジョットの夢を見たのか?」
「過去の…銀さんがいました」
「どんなだった?」
「風邪で…寝てました。もう熱は下がらないんじゃないかって…不安そうで…」

そう言えば、ジョットがいるときに一度だけ風邪を引いた気もする。もう殆ど覚えていないが、子供の自分はそんなことを口走っていたのか。

「ガキだったな…」
「銀さんでも…子供の時があったんですね…ごほっ」

綱吉は咳き込んだ。銀時は枕元に常備しているポカリをコップに注ぐ。
綱吉が起き上がり、それを飲み干す頃には、温まったお粥を持って神楽が部屋に戻ってきた。

「持ってきたアルヨォ」
「食えるか?」
「何とか…」

綱吉は銀時や神楽に見守られながら、ゆっくりとお粥を食べた。





「終わらねぇ…」
「近藤さんがサボるなって言ったのはこういう事かィ…」
「凄い量なのな…」

沖田、獄寺、山本の前には、書類の山が出来ていた。これを今日中に?無理だ。不可能だ。近藤は今日出来るところまでやれば言いと言っていたが、今日がまるまる終わる。

「十代目の容態見に行けないじゃねぇか…」
「アイツがどうかしたのか?」

部屋の襖を開けて顔を出したのは、副長の土方だ。目の下にははっきりと隈ができており、疲れが分かる。

「土方さん…こんちはっす…」
「何でィ土方この野郎…」

山本と沖田は俯せていた顔を上げた。

「近藤さんが様子を見てこいって言うんでな。ついでに連絡をしに来たんだが…万事屋にいる小僧がどうした?」

土方は三人の前に胡座をかいて座った。

「十代目は小僧じゃねぇ」
「ツナ、風邪らしいのな」
「風邪だぁ?」

土方は煙草を取り出そうとしたが、思い直して止めた。真面目に仕事をしている者の前で吸うのは体が悪いのだろう。

「なら、会うのは延期するか…」
「会う?誰にだ?」

獄寺は興味を持ったのか、土方を見る。土方は、はっきりと告げた。



「松平のとっつぁんが、出張から帰った」






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