第一章 第三話     4/115
 

「あぁ?異世界転送装置?」
「そうだ。何でも、幕府が保管していた装置を、天人が盗み出したらしい」

銀髪パーマの青年――坂田銀時は、僧に変装した黒髪長髪の青年――桂小太郎と橋の上で話していた。
銀時は新八と別れたあと、一人でサボリと言う名の猫の待ち伏せをしていたのだが、そこを桂に見つかったのだ。
銀時は無視しようとしたが、勝手に桂は話し出し、最初の話題になる。

「その装置を使えば、異世界から物を転送できる。その名のままだな」
「うっさんくせぇ・・・」

銀時は何も言わず歩き出す。桂がその横に並び歩く。

「それが本物らしい。十数年前に一度使われた記録があるのだ。何でもその時は人間が転送されたという」
「人間だぁ?」
「ああ。日本人も一人いたらしく、金髪の男に、赤い髪に入れ墨の男もいたという。ともかく複数の人間だ」
「人間ねぇ・・・赤い髪って、随分と気合いが入っているこって。入れ墨も入れて、どっかのヤクザにでも弟子入りする気かねぇ」
「貴様・・・真面目に聞く気がないな?」

確かに銀時はいつものように死んだ魚の様な目をしてやる気がない。桂の話にまったく興味がないのだ。

「うっさんくせぇんだよ。異世界って・・・ヅラ、妄想もいい加減にしねぇと、お仲間に笑われんぞ」
「俺とて最初は信じていなかった。しかし、確かに使われたという記録はあるのだ」

桂はここで真剣な顔になった。

「考えても見ろ、銀時。前回はただの人間だった。しかし今回もそうだとは限らん。見たことがないほどの悪意を持つ生物かもしれんし、江戸を吹き飛ばすような大量破壊兵器かもしれん。そんな物が天人に転送されてみろ。江戸は大惨事になるぞ」
「だってお前・・・異世界って・・・どこの中二病患者?」
「銀時!!俺は真面目に・・・」
「あぁ、うっせぇなぁ!!だったらそいつ!その転送された奴!連れてこい持ってこい!そうしたら信じてやるし、その装置取り戻すのも手伝ってやる!お前はそう言いたかったんだろ!」
「確かに手伝えと言いに来たのだが・・・しかし・・・」
「ほら見ろ。お前も本当は信じてねぇんだよ。だから探さねぇ」
「どんな物かも分からず探せるか!だいたい転送されてからでは遅い!転送をする前にその装置を取り戻すか壊すかを・・・」
「めんどいだるいかったるい。お前一人でやれ。こっちはそんな変な装置よりも猫探しに忙しいんだよ」

銀時は全く聞く耳持たない。桂は更に何か言おうとするが、その前に前方に見知った顔が見えた。

「あっ、銀ちゃんに・・・ヅラ」
「久しぶりだなリーダー」
「神楽、猫は見つかったみてぇだな。ていうか・・・」

神楽と新八はわかる。二人で合流して猫を探していたのだろう。銀時は三人の中で唯一の見知らぬ顔を見た。

「そいつ・・・誰?」

綱吉は青くなった顔を上げた。





「並盛?どこだ、それ」

銀時達五人はファミレスにいた。猫を無事に届け、神楽のお腹が限界に達したのでひとまず報酬でご飯にすることになったのだ。
そこで綱吉はどこから来たのかという話になったのだが・・・。

「えっと・・・俺からすれば何で江戸になんているかっていう感じで・・・とりあえず天人何て初めて聞いたし・・・気が付いたら公園にいたというか・・・」
「気が付いたら、公園に・・・ねぇ」
「本当です!!信じられないような話なのはわかってます!だけど、気が付いたら公園にいて、そもそも江戸なんて、もう無いはずで、過去の街で、あっ、でもここは過去じゃないっぽくて・・・ええと、何て言ったら・・・」
「いや、落ち着けって」
「信じてください!」

綱吉は必死だった。こんな話、本当なら信じられるような物ではない。しかし、真実なのだ。病院を紹介されそうだが、それは困る。
一同にしばしの沈黙が落ちる。それを最初に破ったのは銀時だった。

「ヅラ」
「ヅラじゃない桂だ。・・・なんだ銀時」
「見たことがないほどの悪意を持つ生物?」
「・・・・・・いや・・・その・・・」
「江戸を吹き飛ばすような大量破壊兵器?」
「だから・・・あの・・・・・てへ、間違えちゃった」
「お前・・・ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁ!!」

銀時はいきなり立ち上がって桂の頭を勢いよく殴った。桂はその勢いのままテーブルにめり込む。テーブルに大きくヒビが入るが、銀時はかまわず話し続ける。

「何が悪意を持つ生物?何が大量破壊兵器?ただのガキじゃねぇか!どうすんだよ!!お前これ!もう遅ぇじゃねぇか!!もうテンソウされてんじゃねぇか!!どうすんの!?」
「こうなる前に行動に起こすべきだと言ったのだ!まさかもうすでに転送していたとは・・・しかもこんな子供を・・・」
「お前どう責任とんだよ!」
「うむ、すまなんだ」
「謝って済むかぁぁぁぁぁ!!!」

綱吉は話しについていけない。新八も同じようだ。神楽だけは運ばれてきたハンバーグのおかわりを注文している。そこだけが平和だ。

「あの・・・信じて・・・貰えたのでしょうか?」
「綱吉君、だったな。俺は・・・というか俺たちは君がここに来た理由を知っている」
「本当ですか!!」
「十中八九そうだろう。落ち着いて聞いて欲しい」

桂は話した。一週間前に天人が幕府からある装置を盗み出したことを。
話すにつれて綱吉の顔色はどんどん悪くなる。しかし桂は最後まで話した。これは綱吉がきちんと知っておかなければいけないことなのだから。



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