第四章 第十三話     61/115
 



高杉と会ってから二日後。場所は万事屋。そこで、本日はいつもと違う事態が起きていた。

「三十八度。…完全に風邪だな」
「…けほっ」
「今日はゆっくり寝てろ。ツナ」

綱吉は風邪を引いていた。





「ツナ、大丈夫アルか?」
「この世界に来て一ヶ月。慣れない環境で疲れが溜まってたんだろ」
「すみません…ごほっ」

綱吉は布団の中から謝った。
顔は赤く、目は潤んでいる。身体は汗を掻いているし、完全に風邪ですと主張している。

「これから熱も上がるだろうな。まぁ、薬飲んで寝てろ。神楽、邪魔するなよ」
「するわけないアル!」

枕元にはすぐに飲めるようにポカリとコップを置いた。額には濡れタオル。これで大体の風邪対策体勢は完成と言えよう。

「薬の前に飯何か食わないとな。お粥食えるか?」
「たぶん…」
「銀ちゃん、私この部屋いてもいいアルか?」
「風邪移るぞ?」
「そうだよ、神楽ちゃん…けほっ…あまり近づかない方が…」
「大丈夫アル!馬鹿は風邪引かないアル!」
「自分で言ってちゃ世話無いな。まぁ、ツナがいいならいいが。俺はお粥作ってくらぁ」

銀時は立ち上がって部屋を去る。神楽は綱吉の寝ている布団の隣に座った。

「何かあったらすぐに言うアルヨ?私、ずっと此処にいるアルからな」
「神楽ちゃん…移るって…」
「ツナはそんな心配してるんじゃないアル!早く直すネ!」

神楽はそう言って綱吉の布団を整える。真面目に看病する気はあるようだ。
一度言ったら聞かない子だというのはこの一ヶ月で分かっているし、お言葉に甘えよう。熱が上がってきているのか、先ほどよりもきついし、すぐ隣に誰かいるのは安心する。

(風邪の時は心細くなるしなぁ…)

風邪になって分かる、この心細さ。誰かがいるというのは、看病という面から以外にも、精神面でも助かる。

「ありがとう…ごほっ」
「礼よりも元気になるアル。それが一番嬉しいネ」

神楽が隣にいる中、綱吉は眠りに落ちた。





「十代目が風邪だと!?すぐに看病に…」
「逃がすか獄寺。今日の仕事だけはサボるなって近藤さんに言われてるんでィ」
「ツナ風邪なのかぁ。じゃぁ、仕事が終わった後にお見舞いに行くのな」

真選組屯所。電話で万事屋から報された情報は、獄寺にとっては最大級の問題だった。

「仕事なんてやってられるか!俺はすぐに十代目の元に…」
「だが、あの小僧の性格から言って、仕事を投げ出して来られちゃ肩身が狭いんじゃないかィ?」
「う゛…」
「それに、看病は万事屋のみんながしてくれると思うぜ?」
「だが…」
「まぁ、山本の言うとおり、仕事が終わってからだな。しっかりやったらあの小僧も見舞いに来てくれたら嬉しいだろ」
「十代目が…嬉しい」
「あぁ。めっちゃ喜ぶぜィ」

沖田の言葉を最後まで聞かず、獄寺は仕事場に走り出す。

「待っていて下さい十代目!必ずすぐに終わらせ貴方の元に馳せ参じます!」

近所迷惑になるような大音量の叫びと共に、獄寺の後ろ姿は小さくなっていく。

「アイツの扱い方が分かってきたぜィ」
「沖田さん、すごいのな!」

その後ろ姿を、二人は歩きながら追うのだった。






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