第四章 第八話     56/115
 




「銀さん」
「あ?」

銀時は、空を見上げながら鼻をほじっている。すでにいつもの銀時に戻ったように見えるが、それが本当なのか演技なのか、綱吉には分からなかった。
分からなくて良いと思った。

「銀さんは、プリーモに会ったことがあるんですよね?」
「プリーモ…ね。まぁ、そうだな。会ったことがあるというか、暫くは一緒にいたというか」
「そうなんですか?」
「アイツ、居候してたんだよ。松陽先生の所で」
「へー…」

夢で、彼等がどのように過ごしていたのかの様子は見ていたが、詳しいことは何一つ分からなかった。だから、銀時の話は興味深かった。

「どんな人でしたか?」
「変な奴」
「……え?」
「変な奴だったな。ガキっぽいかと思ったら、説教臭い事言ったりもするし。凄い奴なのかと思ったら、その日の内に一緒に怒られることもあった」
「あはは…確かに変な人かもしれませんね」

綱吉は、少し嬉しかった。プリーモの話が聞けて。
プリーモのマントをモチーフにした武器を使い、また、未来での戦いで助けて貰ったこともあり、彼に少なからず興味はあった。
しかし、彼は百年以上も前の人物だ。未来で助けて貰えたのは本当にイレギュラーな事であり、本来なら写真でしか彼の姿を見ることは出来ない。勿論、面識がある人も、いない。
だから、プリーモの話が聞けるのは奇跡だ。時間と世界を超えた、奇跡だ。

「もう少し聞かせて下さい。プリーモのこと」
「良いけど、また今度にしねぇか?神楽が腹減って死ぬぞ」
「あ…」

もう日が沈みかけている。思ったよりも話し込んでいたらしい。
忘れてはいけない。二人は夕飯の買い物組なのだ。二人が帰らなければ、用意は出来ず、夕飯は食べられない。このままでは神楽の逆鱗に触れる。

「すみません…」
「いや、良いけどよ。おら、帰ェるぞ」

銀時はベンチから立ち上がる。そして振り返らないまま公園から出て行くが、その道は帰路ではなかった。

「あれ、銀さん。そっちは万事屋じゃないですよ?」
「何言ってやがる」

銀時は振り返った。

「ジェラート買うんだろうが」

銀時は笑っていた。綱吉も笑った。そして、銀時の後ろに付いていく。

「なぁ、ツナ」

綱吉が追いつく前、銀時は綱吉を見ずに、前を見ながら言う。

「その、プリーモってのは、ツナの先祖だろ?」
「はい。確か、曾曾曾爺ちゃん…だったかと」
「そうか…なら……」



「アイツ、もう死んじまってるのか」



銀時の顔は、綱吉には見えなかった。

そのまま、ジェラート屋に着くまで、綱吉は銀時の後ろを歩いた。二人とも、何も言わなかった。



ジェラート屋に着いたときは、銀時はいつも通りで。
それが本当なのか演技なのか、綱吉には分からなかった。






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