第四章 第七話     55/115
 




「ツナ?おい、どうした?」

銀時が肩を揺する。それで綱吉は現実に引き戻された。

「バニラ、チョコ、ヨーグルト…」
「え、おい」

綱吉は戸惑う銀時に構わず、口を動かす。

「沢山種類はあって、勿論イチゴも美味しくて…」
「ツナ…お前…」

銀時は戸惑いから、驚きへと表情を変えた。綱吉の台詞に、聞き覚えがあったのだろう。
そして、綱吉は決定的な言葉を口にした。



「松陽さんは、一番人気のバニラ」



銀時の顔が、驚愕で固まった。

「ツナ…お前、何で…」
「銀さんと一緒にいた人は、俺の先祖です」
「は?先祖?」
「はい」



「ボンゴレプリーモ。マフィアボンゴレの創始者」



ボンゴレリングが、熱かった。





二人は、近くの公園のベンチで座っていた。

「えー…どういうこった?先祖って」
「言ったまま何ですけど…この世界に来て、俺、何度か倒れましたよね?」
「おう」
「その時、夢を見てたんです。似たような感じの夢を」
「夢?」

銀時は右手で顔を掻いた。訳の分からない事を言われて、困っているのかもしれない。綱吉も、その様なことを言っている自覚はある。だが、まだ自分でだって混乱しているのだ。

「その夢で、子供が三人と、男の人が二人出て来ました。俺はその男の人の一人の視点でいつも夢を見ていました」
「……」
「もう一人の男の人は『松陽』や『先生』って呼ばれていました。子供の名前は、一人はまだ分からないんですけど、二人は『晋助』と…」

綱吉は、真っ直ぐと銀時を見た。

「『銀時』」

銀時は、強めに自分の頭を掻いた。

「銀さん」
「……おう」
「これ、銀さんですよね」
「……だな」
「俺が見ている夢は、この世界での過去です」

綱吉は断言した。もはや、この仮説を否定できる要素は見当たらなかった。
銀時は呆れたように溜め息をつく。

「お前の周りは不思議ワールドだな。未来に行ったり、異世界に来たり、過去見たり」
「俺もそう思います」

綱吉は、思わず笑ってしまった。自分の体験談は、似たような印象を与えるらしい。自分にも、他人にも。

「何で、お前に過去が見えたんだろうな」
「あぁ、それはたぶんコレです」

綱吉は左手を挙げて銀時に見せた。綱吉の左手の指には、輝く物が一つ。

「…指輪?」
「はい。数多くの曰く付きのボンゴレリングです」

綱吉は左手を膝の上に戻した。銀時はよく分かってないようで、頭の上に「?」も見える。

「この指輪、それまでの時間を記憶できるらしいです」
「めちゃくちゃ凄ェじゃねぇか!?」
「一世紀以上前の遺物とは思えませんよね」

綱吉は乾いた笑いを漏らす。笑うしかない。
死ぬ気の炎を灯し、血族かどうかも判別し、しかも初代の意志も記憶していた超ハイテク指輪。コレが百年以上も前の物だと、誰が信じる。本当なのだから困る。

「まぁ、そんなわけで、これのお陰で過去を見たと言いますか…」
「それ、売ったらいくらになる?」
「冗談でも止めて下さい」

綱吉は銀時から影になるようにボンゴレリングを隠した。勿論、銀時が本気ではないのは気付いている。ノリだ、ノリ。

「でも、過去を見たのはこの指輪が原因だとして…どうしてこの指輪を持っていたプリーモがこの世界にいたんでしょう」
「あー…心当たり的な物なら、あるぞ?」
「え?」

銀時は自身がなさげに口を開く。

「ツナ、異世界転送装置で此処に来ただろ?」
「はい」
「それ使われたの、二回目らしい」
「へ?二回目?」

綱吉は目をぱちぱちとさせる。

「ヅラが言ってたんだよ…確か、金髪と赤毛と日本人?が、来たらしいぞ」
「マジですか…」

恐らく金髪はプリーモのことだろう。だとすると、残り二人はプリーモの守護者のことだろうか。

「何という…」

一回目は、プリーモ達が来た。二回目は、その子孫である綱吉達が。
――偶然で、片付けて良いのだろうか?

「えっと、整理すると…異世界転送装置で、以前にツナの先祖が来た」
「プリーモは、この世界で過ごした」
「んで、二回目はツナ達が来た」
「俺は、ボンゴレリングが記憶した、プリーモがこの世界で過ごした過去を夢で見た…でしょうか?」
「不思議体験」
「言わないで下さい…」

綱吉は、もう笑えなかった。






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