第四章 第三話     51/115
 



『その花、どうしたンだよ?』

『摘んできた。綺麗だろう?』

『まぁ…そうだな。なんて花だ?』

『さぁ?』

『知らないのかよ』

『知らなくとも、綺麗な物は綺麗だ』

『適当だな…』

『でも、鮮やかな紅だろう?』

『そうだな…夕日みたいだ』

『夕日か…詩人だな』

『うっ…うるせい!!』

『俺は炎みたいだと思った』

『炎?』

『ああ。燃えているみたいだろ?』

『ふーん…』

『見えないか?まぁ、感じ方は人それぞれだからな』

『そりゃそうだろ』

『そりゃそうだ』



笑いながら、二人は並んで歩く。





「おい、ツナ?」
「…銀さん?」

後ろから声を掛けられた。振り返れば、背後には銀時が立っていた。
高杉という名の男の時と同じ状況だが、先ほどとは違い、銀時は心配そうに顔を覗き込む。

「…あれ?花は?」
「花?花って、そこの花屋のか?」
「いえ、…え?」
「何だぁ?立ったまま寝てたのか?」

銀時はぼりぼりと頭を掻く。
綱吉はきょろきょろと周りを見渡すが、寂れた町並みがあるだけだ。先ほどまで見ていたはずの『彼等』はいない。

「……嘘…白昼夢?」
「おいおい…マジで寝てたのかよ…」
「…みたい…です?」

綱吉は呆然と立ち尽くす。
高杉の問と、夢で見た問。同じモノだった。何故だろう…不思議な感じがする。

「おーい、ツナ。また寝てンのか?」
「…大丈夫……大丈夫です」
「そうか?」

綱吉は気を取り直したように笑い、話題を変えようとする。

「銀さん、早かったですね。もう依頼人との話は終わったンですか?」
「早いって…むしろ時間掛かっちまったンだが…二時間近く掛かったぞ?」
「………マジですか?」
「マジだ」

白昼夢、恐るべし…。
高杉と名乗ったと別れてから、一時間以上は経っていた事になる。その間、ただこの場に立っていたというのか…。

「…あれ?」

指に填めているボンゴレリングが熱い。炎を灯すでもなく、まるでただ何かに反応しているようだ。
今までこのようなことはなかった。異世界に来て壊れてしまったのだろうか?曰く付きのモノだから、分からない反応をされると意味があるのではないかと思ってしまう。
しかし、それは時間が経てば元のようにただの指輪の温度に戻る。熱くなったのは気のせいではなかった。何だったというのだ?

「おーい、ツナ?」
「あっ、はい」
「体調が悪いなら、早く帰って休むか」
「…はい」

綱吉は万事屋に帰ろうと一歩を踏み出す。しかし、帰る前に再び花屋を見る。

「銀さん」
「何だ?」
「この花の色、何に見えますか?」
「あ?…んー…イチゴ。パフェ食いてェ」
「…ふふ、そうですね」


感じ方は、人それぞれですね。



笑いながら、二人は並んで歩く。






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