第三章 第八話     41/115
 




「延長料金はしっかり頂くぜ」

近藤は銀時の手を取りパトカーに移る。獄寺もすぐさま飛び移る。パトカーは酷い有様だが、まだ走ることは出来そうだ。

「おい。十代目はどうした」

獄寺は先ほどから気に掛かっていたことを訊いた。近藤も気付いていたのだろう。周りをきょろきょろと見渡す。

「それが分からないアル。一人で真選組に様子見に行ってから行方不明ネ」
「真選組に行ったならお前等と一緒にいるかと思ったンだが…会ってねぇみたいだな」

銀時は頭を強く掻きながら言い、予想が外れて難しい顔をしている。

近藤暗殺の事を知った彼が、黙って待っている何て事はありえない。すぐに駆け付けようとするはずだ。
獄寺は周りを見る。もしかしたら、彼はすでにここにいるかもしれない。この混戦状態の戦場に。

「マジかよ…」

彼は強い。それは獄寺も分かっている。しかし、この戦場を見れば不安がどんどんと込み上げてくる。

「土方ァァァァ!!」
「伊東ォォォ!!」

後ろに立っている土方と、バイクに乗り接近してくる伊東が擦れ違いざま刀を交える。
それは一瞬だった。
伊東の右肩からは血が出て、土方が優勢かと思われた。しかし、次の瞬間には伊東に斬られたとみられる車輪の一つが外れた。パトカーのバランスは崩れ、激しく揺れる。

「オイ後ろォ!!」

土方の叫びで振り返れば、切り離されていた車両がすぐそばまで迫っていた。
土方がパトカーと車両の間に橋のようになって衝突を食い止めるが、それもいつまで保つか分からない。しかも、両脇から敵の車が接近してきた。

「トッシー後は私に任せるネ」
「おかしいィィィ!!何かおかしィィ!!」

神楽が橋になっている土方の上に乗って車両の扉を開けようとするが、立ち位置が安定しないためだろうか、揺れが激しいためだろうか、なかなか開かない。

「果てろ!!」

獄寺は一方の敵をダイナマイトで吹き飛ばす。反対側の敵も同じように吹き飛ばそうとダイナマイトを構えて振り返るが、すでに近くまで接近していた敵が神楽に刀を振り下ろそうとしていた。

「オイあぶねェェ後ろ!!」

しかし、その刀が振り下ろされることはなかった。

ドゴオオ!

車両の扉が中から吹き飛ばされ、それに敵は巻き込まれる。敵の車まで飛んだそれは、中で戦っていた仲間の仕業だった。

「近藤さん、さっさとこっちへ移ってくだせェ」
「大丈夫かみんな!」

顔を出したのは勿論沖田と山本。山本が少し後ろにいることからも、扉を飛ばしたのは沖田のようだ。
中にいた隊士は全て倒し終わっている。二人とも傷だらけで、戦いは熾烈を極めたようだ。

「今度弱み見せたらァ、次こそ副長の座ァ俺が頂きますよ」
「土方ここォォォ!!」

先ほどの神楽のように沖田も土方の上に当たり前のように乗っている。
土方はつっこむが、山本にはそれ以上に言わなければいけないことがあった。

「ツナが捕まった!」

山本が焦りを見せながら言ったその言葉に皆驚く。姿が見えないと思っていたが、捕まっていたとは。

「何でツナが捕まったアルか?」
「さぁねィ。しかし伊東の奴は大して興味なさそうだったから、この場合は伊東にってよりも、鬼兵隊に捕まったと考えた方が良いかもしれませんぜィ」
「だから俺の上で会話するんじゃねぇ!!」

流石にこれ以上は土方が保たない。綱吉についての話は足場をきちんと確保してからの方が良いだろう。
銀時が早く移れと急かしていると、後ろから近づいてくる影があった。

ガシャン!

「ぐがっ」
「銀さんんん!!」
「天パ!!」

それは万斉が乗っているバイクだった。銀時はそれとモロに衝突して車から落ちてしまう。

しかし、それに気を取られている暇はなかった。
先頭車両にも追いついてしまい、前も後ろも挟まれてしまう。しかも、先頭車両には伊東の姿もあった。
壊れかけのパトカーは車両に押されて一方が持ち上がり、縦の状態になってしまう。

「土方君。君は僕の唯一の理解者だった」

過去形で語る彼は、勝負の終わりを予感しているのだろうか。

伊東は刀を抜刀の型で構える。

「来いィィィィ!!」

パトカーを斬り裂き、土方が姿を現した。

「最後の決着の時だァァァァ!!」


伊東の叫びが戦場に響いた。






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